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第5話(最終話):太平洋に沈む夕日と、みうらティーパーティー

 三浦半島の西海岸。そこには、空と海が溶け合い、すべてが黄金色に染まる「奇跡の10分間」が存在する。

 水平線の向こう、富士山のシルエットを横目に頂く最高級のダージリン・ファーストフラッシュ。これこそが、『みうら女子大生の会』が辿り着いた至高の終着駅ターミナルだ。

「……あら。あのような場所に、『シミ』がありましたかしら?」

 葉山はやま 麗香れいかは、ティーカップの縁から水平線を眺め、優雅に、しかし氷のような冷たさで呟いた。

 彼女の視界を遮るように、海岸線の特等席にそびえ立つ、建設途中の『超高層リゾートタワー』。

 成金社長が「三浦の空を独占する」と豪語して建て始めた、無粋な鉄骨の塊だ。

「会長、さすがにあのビルは、まぐろの力でもスライドできないよ。地盤にガッチリ固定されてる」

 パワー担当、三崎みさき まぐろが、プロテインを飲み干しながら悔しそうに唸る。しかし、麗香は静かに首を振った。

「動かせないのなら、私たちが『上』へ行けばよろしいのですわ。……こよみさん、魔界ホームセンターの最高傑作、出番ですわね」

「任せなさい。近所のホームセンターの『業務用エレベーター部品コーナー(非売品)』で仕入れた、**【特注・超高速工事用リフト(大気圏突破仕様)】**よ!」

 こよみが取り出したのは、見た目こそ工事現場の足場だが、そこにはジェットエンジンのような巨大なファンがいくつも装備されていた。

「よっしゃあああッ!! 景色が邪魔なら、一番高い場所を『お茶の間』にしてやるよぉぉぉッ!!」

 まぐろが工事用のクレーンに特製リフトを強引に接続。スイッチを入れた瞬間、4人を乗せたティーテーブル一式は、時速100キロを超える猛スピードで建設中のタワーの外壁を垂直移動し始めた。

「ぎゃああああッ! なんだこのリフト! G(重力)がヤバすぎるぅぅぅ!!」

 屋上で指示を出していた成金社長が、爆風と共に現れた女子大生4人組に腰を抜かす。

「……あら。ごきげんよう。少しこちらのテラス、お茶会のために『改装』させていただきますわね」

 麗香の合図で、暦と鮪が動き出す。建設中の剥き出しの鉄骨に、ホームセンターの『最高級大理石風クッションフロア』を敷き詰め、数分でそこを王宮のようなサロンへと変貌させた。

「な、何なんだお前ら! ここは俺の持ちビルだぞ! 警察を呼ぶぞ!!」

 叫ぶ社長に対し、セレブ担当の摩里奈まりなが、沈む夕日にブラックカードをかざした。

「警察? ああ、あそこのボロボロになった建物のことかしら。いま、この建設プロジェクトの総予算1000億円を私のポケットマネーで全額決済して、このビルの名前を『みうら女子大生の会・第5部室』に変更しておいたわ。 ちなみに、あなたは今から『お茶会のための人間空気清浄機』に役職変更クビよ」

「俺の1000億の夢がぁぁぁぁッ!!」

 社長の絶望をBGMに、太陽が水平線へと沈んでいく。

 タワーの最上階、遮るものの何一つない地上200メートルからの絶景。

 

「……ええ。最高の景色ですわ。三浦の空も、海も、夕日も……すべてがお茶の味を深めてくれますの」

 麗香は、黄金色の光に包まれながら、最後の一口を飲み干した。

 眼下には、彼女たちがこれまでに「平和的に解決」してきた、スライドしたお土産センターや、警察署に刺さったダンプカーが見えたが、そんな些末なことはどうでもよかった。

 私たちはただ、最高の景色でお茶を楽しみたいだけ。

 そのためなら、高層ビルを乗っ取り、物理法則を札束で殴り倒し、社長を社会的に抹殺するくらいの労力は惜しみません。

 だって私たちは、平和とお茶とみうらを愛する、しとやかなみうら市民なのですから。

(完)

読者の皆様。

お疲れ様でした!最後は「ビルを動かせないなら、自分たちがてっぺんを奪う」という、最大級の暴挙で締めくくらせていただきました。

第1話: 京急と桜を守る(物理)

第2話: 露天風呂のプライバシーを守る(宇宙)

第3話: 森の湧き水を守る(収穫)

第4話: 車両基地の夜景を守る(納車)

第5話: 太平洋の夕日を独占する(買収)


みうら警察署はもう原型を留めていない気がしますが、彼女たちが満足ならそれで「平和」なのでしょう(笑)。 

彼女たちは決して自ら破壊を行いません(※鮪さんのパンチを除く)。

あくまで「ホームセンターの道具でスライドさせただけ」であり、「たまたま滑っていった先に警察署があった」という主張を崩しません。

警察署が半壊しているのは、彼女たちに言わせれば**「そこに警察署を建てた公共工事の計算ミス」**なのです。

「私たちは平和とお茶とみうらを愛する、善良なみうら市民です」

この言葉の裏にある「自分たちのティータイムを邪魔するものは、たとえ国家権力であってもスライドさせる」という彼女たちの狂気が、みうらの空のように晴れやかに伝われば幸いです。

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