第4話:夜の車両基地と星空 ~不法投棄のダンプは警察署へスライド納車します~
深夜のみうら。そこには、静寂の中で眠りにつく『赤い電車』たちの聖域――車両基地がある。
等間隔に並ぶ架線柱、ミリ単位で整備されたバラスト(線路の石)、そして月光を反射する鋼鉄のレール。
「……見て。この完璧なパース。この幾何学的な美しさを肴に飲むミッドナイト・ティーは、何物にも代えがたい贅沢ですわ」
葉山 麗香は、暗闇の中でティーカップを掲げた。
彼女たちの視界には、完璧に整列した京急の車両たちが、まるで巨大な芸術品のように並んでいる。
「……あら。でも、あの不浄な『匂い』は何かしら?」
麗香が鼻を寄せた先。車両基地のフェンス際で、数台のダンプカーがドサドサと産業廃棄物を不法投棄していた。
夜の静寂を切り裂く、下品な排気音とゴミの崩れる音。
「会長、あれ不法投棄だよ。しかも私の大好きな『バラストの造形美』に、生ゴミを混ぜようとしてる」
パワー担当、三崎 鮪の拳が、みしみしと音を立てる。麗香は冷たく、月光を反射する瞳でダンプを睨みつけた。
「平和な眠りを妨げるゴミは、相応しい場所へ捨てるべきですわ。……暦さん、魔界のアレ、出番ですわね」
「任せなさい。近所のホームセンターの『物流倉庫・特設裏コーナー』で買ってきた、**【超重機用・無音オムニホイール(惑星移動用)】**よ!」
暦が取り出したのは、ダンプカーの車体の下に滑り込ませるだけで、あらゆる方向への「無音スライド移動」を可能にする、オーパーツ紛いの巨大キャスターだった。
「よっしゃあああッ!! 三浦の夜を汚すゴミは、警察署へお急ぎ便で配送だぁぁぁッ!!」
鮪がダンプカーのバンパーを掴み、そのまま**【フルスロットル・プッシュ】**を敢行する。
運転席で仮眠していた不法投棄犯たちは、自分の車が突然、無音で時速60キロまで加速し始めたことにパニックを起こした。
「な、なんだ!? ブレーキが利かねえ! 車が……車が横滑りしながら爆走してるぅぅぅ!!」
犯人たちの悲鳴を聞き流しながら、セレブ担当の摩里奈が涼しい顔でスマホを操作する。
「ええ。いま、三浦警察署の駐車スペースを『3分間だけ、私の私有地としてレンタル』する契約を署長と結んできたわ(札束で)。だから、そこに何を『納車』しても、法的には私の自由よ。……あ、お小遣い、3億もかかっちゃった」
その直後。
みうら警察署の駐車場――すでに第1話のプレハブが突っ込み、第3話のコンクリートが山積みになっている「被災地」へ、3台のダンプカーが慣性ドリフトで突っ込んだ。
「あべしィィィッ!! 止まらねぇぇぇ!! 建物(警察署)に……また新しい建物が刺さるぅぅぅ!!」
ドゴォォォォォン!!
すでにボロボロだった警察署の壁に、ダンプカーが綺麗に「納車」された。
「……ええ。静寂が戻りましたわ。ゴミはゴミ箱へ。実に合理的で平和な解決ですわね」
麗香は、星空の下で最後の一口を飲み干した。
遠くで警察官たちの「またお前らかぁぁぁ!」という絶叫が聞こえてきたが、彼女たちの耳には心地よい夜風の音にしか聞こえていない。
私たちはただ、最高の景色でお茶を楽しみたいだけ。
そのためなら、ダンプカーを警察署へ特攻させ、税金で建った建物を物理的に粉砕するくらいの労力は惜しみません。
だって私たちは、平和とお茶とみうらを愛する、善良なみうら市民なのですから。
今回の「みうら警察署」被害状況
状況: プレハブ(1話)、コンクリート(3話)に続き、ダンプカーが3台「刺さる」。
警察官の反応: もはや驚きを通り越し、ティーパーティーの4人が近づくだけで避難勧告が出るレベル。
摩里奈の権力: 警察署の駐車場を「一時的な私有地」にして強引に正当化。




