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第2話:海が見える絶景露天風呂 ~盗撮ドローンは衛星軌道までお返しします~

 三浦半島の先端。そこには、湯船と海が境界線を失う「インフィニティ・露天風呂」が存在する。

 水平線に沈む夕日。それを眺めながら、最高級の宇治茶を啜る。これこそが『みうら女子大生の会』が守るべき聖域テリトリーだ。

「……聞こえますわ。三浦の波音に混じる、あの不浄な羽音が」

 葉山はやま 麗香れいかは、湯船に浮かべたヒノキの盆に置かれた急須を手に、鋭い視線を空へ向けた。

 そこには、ホバリングしながらレンズをこちらに向ける、数台の盗撮ドローン。

「会長、あれ盗撮だよね!? 通報する?」

 パワー担当、三崎みさき まぐろが湯船から立ち上がろうとするのを、麗香は静かに制した。

「通報? そんな悠長なこと。……それより鮪さん、見てください。あのドローンの『安っぽいプラスチックの質感』と『点滅するLED』。せっかくの夕日の色彩を完全に汚しています。私の景色にノイズを混ぜる罪、万死に値しますわ。 ……消して(しなせて)ちょうだい」

「了解! 暦、アレいくよ!」

「任せなさい。ホームセンターで一番重い『釣り用オモリ』と『防鳥ネット』を、特殊な弾性ゴムで合体させた、対ドローン用・超高速捕獲ネットよ!」

 こよみが差し出したのは、もはや網というよりは「兵器」に近い何かだった。

 バスタオル一枚の姿で岩場に飛び出した鮪は、その網を手に取ると、**【地対空・フルスイング】**の体勢に入る。

「おっらあああああッ!! 蚊トンボが三浦の空を飛んでんじゃねえよッ!!」

 ドゴォォォォォン!!

 衝撃波が海面を割り、網に絡め取られたドローンたちが一塊の鉄クズへと変わる。しかし、鮪の腕力はそれだけでは止まらなかった。

「……あら。鮪さん、せっかくですから、そのまま『お返し』して差し上げたら?」

「ガッテン! 衛星軌道までぶっ飛べええええええッ!!」

 鮪の豪腕から放たれたドローン(だったもの)は、第一宇宙速度を突破。 炎を上げながら空の彼方、宇宙へと消えていった。

「……さて。摩里奈さん、次は『発信源』ですわ」

 麗香の冷たい声を受け、セレブ担当の摩里奈まりなが湯船の中でスマートフォンをタップした。

「ええ。ドローンの電波から犯人の居場所を特定したわ。……あら、あそこのレンタルボートの上ね。いま、彼の**『戸籍』『銀行口座』『SNSの全データ』をリアルタイムで買収・消去**しておいたわ」

「えっ、摩里奈、それって……」

「そう、彼はもうこの世に存在しない人間。……さらに、彼が乗っているボートの運営会社も今この瞬間に買い取って、**『このボートは今から一秒後に解体処分とする』**という社内規定を可決したわ」

 その直後。

 沖合で「ギャアアアアッ! 俺の銀行残高がゼロに!? っていうか俺のマイナンバーが消失してるぅぅぅ!?」と叫んでいた犯人のボートが、不可解な物理現象(摩里奈の権力)によって真っ二つに割れた。

「……しんだわね。社会的にも、物理的にも」

 摩里奈が涼しい顔で告げる。

「ええ、合掌。不純物が消えたところで、お茶を楽しみましょう。この夕日、今この瞬間が一番美しいのですから」

 海に沈んでいく犯人(の社会的地位)を背景に、4人は静かに湯船で煎茶を啜った。

 私たちはただ、最高の景色でお茶を楽しみたいだけ。

 そのためなら、邪魔な奴の存在そのものをこの宇宙からデリート(しなせる)くらいの労力は惜しみません。

 だって私たちは、平和とお茶とみうらを愛する、しとやかなみうら市民なのですから。

みうらのホームセンターは魔界です。

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