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天才

結婚した。


相手は30歳、バツイチで子どもがいる。いわゆる“訳あり”というやつだ。

だが、そんな事情などどうでもよくなるほど、彼女は美しかった。


桃の花のように淡い横顔。すらりと伸びた体。女神のように長い髪。

そして、覗き込めば吸い込まれてしまいそうな瞳。


どこを取っても、非の打ち所がない。


ただ一つを除けば。


子どもがいる、という点だ。


そのせいで、彼女を独占することができない。


子どもじみた不満だと、自分でも分かっている。

だが、新婚の俺にとっては、それがどうしようもなく大きな問題だった。


子どもは15歳。受験生だ。

毎日机に向かい、勉強を続け、俺とは一言も交わさずに眠る。


無関心。

拒絶。


それだけならまだよかった。


何より気に入らないのは、その容姿だった。


母親には似ても似つかない。

潰れた花のような顔に、濁った瞳。

ぼんやりとした立ち姿に、どこか不潔さを感じさせる雰囲気。


それなのに。


それなのに、あいつは彼女の時間を奪う。

俺のものになるはずだった時間を。


結婚前、俺は何度も彼女に駆け落ちを提案した。

だが、彼女はそのたびに首を横に振った。


理由は分かっている。


あの子どもだ。


彼女は、母親であり続けようとしている。


「15で産まされた子どもが、そんなに大切か?」


苛立ちを隠さずにそう問うと、彼女は決まって柔らかく微笑む。


「ええ。大切よ。世界にたった一つの宝物ですもの。」


その笑顔が向けられている先が、自分ではないことが、どうしようもなく腹立たしかった。


違うだろう。


世界にたった一つの宝物は、俺であるべきだ。

俺じゃなければならない。


そうでないのなら


邪魔なものを、取り除けばいい。



数日後。


静まり返った家の中で、俺は「それ」を見つけた。


息を呑み、震える手で携帯を取り出す。


「も、ッもしもしッ!?俺の息子が倒れて、ッ動かないんだ……!!いますぐこっちに来てくれ!!!」


必死に声を震わせる。

怒りと恐怖を装って。


第一発見者として、俺は完璧だった。


涙を浮かべ、取り乱し、何度も名前を呼ぶ。


まるで、本当に何も知らないかのように。


すべてが、計画通りに進んでいた。


あとは、誰にも気づかれなければいい。

ただ、それだけだ。

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