インベーダーゲーム
〈これが秋うてなに立ちて睥睨す 涙次〉
【ⅰ】
「まづいかんと思ふのは」とカンテラ。「『ゲーマー』のペースに乘つてしまつてゐる自分だ」珍しく仲本氏(前回參照)の「魔界壊滅プロジェクト」、會議室の客となり、主任警部(警部補から昇進した)佐々圀守を相手に、今の心境などを語つてゐる。「『ゲーマー』はニュータイプ【魔】の潮流から産まれて來たんでせうか」佐々は生眞面目な面持ちでカンテラに問ふ。「あゝ恐らくさうだらうね。あんな【魔】、* ルシフェル統治の時代では考へられなかつた」-「俺たちとしては、奴の身元の洗ひ直しは不可欠だと思つてゐる。例へ奴の『ポイント』を取得する事から離れてもね」
* 前シリーズ第200話參照。
【ⅱ】
「蛇の道は蛇」だ。かう云ふ魔界のゴシップに通じてゐる者、一味の中で、と云つたら、恐らく時軸麻之介の右に出る者はゐない。
カンテラ、時軸を「開發センター」から呼び出した。で、「ぶつちやけ『ゲーマー』の* 實體つて何なんだい?」時軸「インベーダーゲームですよ。もう懐かしいと思ふ人さへゐない」-「昔は喫茶店には必ず置いてあつたよなあ」-「『ゲーマー』の心の根底には、もう相手にされない、『淋しさ』と云ふ物があるんぢやないでせうか」-「なる程。良い話を聴いた。だうも有難う」-「いえ。僕も一味の一員ですから」
* 当該シリーズ第99話參照。
【ⅲ】
(これは、奴を相手にせず、様子を見るに如くはないつて事か)-君繪から助言があつた。(パパ、それは奥の手として取つて置きませうよ。取り敢へず『ゲーマー』のポイント制遵守しといた方がいゝわ)-(それは何故?)-(だつて一味が力を合はせれば、倒せない【魔】なんて、ないもの)
※※※※
〈秋の日は釣瓶落としと云ふ意味がやうやく分かる氣温の下落 平手みき〉
【ⅳ】
-これで正直切羽詰まつてゐたカンテラの氣持ちに、風穴が開いた事は確かだ。「ゲーマー」、カンテラの夢に現れた。「今度は偽ケルベロス-Xだ。* 前回の偽ケルベロスとはちと違ふぞ」-「なんだ、空でも飛ぶのか?」-「...何で分かつたんだ」-「幼稚な貴様の考へつきさうな事だろ?」-「ぐぬゝ」-「ポイントは幾つだ」-「6、として置く」-「累計15な。100ポイントなんて直ぐだ」-(何なんだこの自信溢れる態度は。前回と全然違ふ)「ゲーマー」、さしもの彼も、不思議に思つたらしい。
* 前シリーズ第30話參照。
【ⅴ】
『楳ノ谷汀アワー』の時間。永田はテレビを點けた。「大變です。東京上空に空飛ぶ魔獸が出現しました!!」永田、思はず口に含んだビイルを吹き出した。東京の夜景に舞つてゐるのは偽ケルベロス。然も蘇生したそれは、脊に翼が生えてゐる!
だがカンテラは少しも動揺しなかつた。たかだかインベーダーゲームの【魔】のそのまた手先だ。
-カンテラ、落ち着いて弓に矢を番へた。「カンテラ氏は、だうやら弓矢で對抗する模様!」矢は、この火を吐く三つ首魔犬の、頭を一つ、射拔いた。そして第2矢。第3矢。魔獸は地表に大音響を上げ、墜ちて來た。
永田、こゝでテレビを消した。(空飛ぶ魔獸も方なしか...)
【ⅵ】
「おい、片付けたぞ。ポイントよこせ」-「ぐぬゝ、次回はかうは行かんぞ!」-「能書きはいゝ。こちとら現金収入が掛かつてるんだ」現ポイント総數、15。然もカンテラは自信を取り戻した- このポイント取得による収入は、300萬圓。
※※※※
〈蟲死して秋夜靜かの決まり哉 涙次〉
頑張れカンテラ、100ポイント目指して! その暁には、「ゲーマー」の本體を暴露して、赤つ恥を搔かせてやるのだ!
つー事で「ゲーマー篇」第3話、お仕舞ひ。ぢやまた。