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天才様は恋を知りたい!  作者: 三田元輝
楓編 はじまり
1/1

プロローグ

初めての執筆で拙いところも多いと思いますが、ご容赦ください。


ピピピッピピピッ…

「……ん、んぁ……」 

俺はアラームを止めると身支度を始めた。

自分でも寝起きはいい方だと思う。

今日は5月8日、2年が始まってちょうど1ヶ月あたり、だいぶ新しいクラスにも慣れてきた。

 

ところで、現在の時刻は6時、朝礼は8時半、ここから学校までは多く見積もっても20分程度。 何故俺がこんなに早く起きてるのかというと任された大事な役目があるからだ。……

幼馴染を叩き起こし学校まで連れて行くという役目が。

 

とりあえず、その役目は置いといて麗しのマミーが作ってくれた朝食を食べるとする。

 

「あらっ、秋ちゃん起きたの?今日のたまご焼きは失敗しちゃったからママ特製スクランブルエッグね♡これでもメンバーの中ではいちばんお料理上手だったんだからっ」

と言っているがマミー特製たまご焼きにお目にかかれたのは数えるほどしかない。

 

こんな母でも昔は人気アイドルグループ Fleurir (フルリール)のセンターだったらしい。昔、恥じらいながら見せてくれたライブビデオには歌とダンスをそつなくこなしている母がいた。その時は子供ながら母に羨望の眼差しを向けたが今となっては見る影もない。

 

「秋ちゃん、朝ごはんできてるから食べてね〜」

「あぁ」

置いてある皿にはサラダと焼きたてのクロワッサンと卵焼きになれなかったスクランブルエッグがのっている。 ……まぁ、失敗と言ってもうまいんだけどな。


 

「秋ちゃん今日も楓ちゃんのお家寄ってから行くのよね?」

 

楓ちゃんというのは俺の幼馴染のことだ。

 

「そうだけど、どうしたの?」

「昨日、桂ちゃんから連絡があってね、お家に楓ちゃんしかいないから朝ごはんとお弁当を持たせてくれないかって。だから秋ちゃんこれ楓ちゃんに渡しといてくれる?」


桂ちゃんというのは楓の母親のことだ。

楓の家族は出張で家を空けることが多い。そういう時はこうして俺の家を頼ってくる。かくいううちも両親がいない時はお邪魔しているので持ちつ持たれつの関係というわけだ。 

 

「あぁ、わかったよ。」 

 

tv「…….の主題歌『鬼灯月譚』が動画配信サイトで公開からわずか二週間で五千万回を突破。オリコンランキングでも初登場1位を獲得しました。実はこの楽曲を手がけた作曲者【Maple.】については謎に包まれているんです。顔出しはもちろん、年齢や性別すら明かされておらず、ネット上では「次世代の天才」「有名アーティストの別名義では?」などの声が飛び交っています。 

では、次のイマコレ!は今大注目の若手俳優 音宮桜 さん主演の青春ドラマ 『夕映えに君を見た』 が今週から始まり大きな話題をよんでいます。高校生たちの友情や葛藤を... 」

 

「じゃあ、そろそろ行ってくるよ。」

「気をつけていってらっしゃい。あっ、楓ちゃんにちゃんと渡してね!」 

「わかってるよ。いってきます。」

 

俺は楓に渡す弁当を持ち、テレビを横目に家を出た。

 

 

玄関を出て楓の家までの2mちょっとを歩いたら、貰った合鍵でドアを開ける。

 

「ん?開いてる、、」

 

俺は呆れてため息をつきながら家に入りそのまま楓の部屋に向かった。 

俺の幼馴染 音宮楓 は鍵を閉めるのも忘れるほどだらしなく何もできない。家事はもちろん、部屋の片付けも勉強も体育も。

ただ、、、

  

..ガチャ


「楓起きろ。また、おまえ鍵かけてなかっただろ。家におまえしかいないんだから気をつけろって何回言ったら、、、なんだ今日は起きてるのか」


四方に跳ね、無造作に束ねられたオレンジがかった髪。

薄っすらくまができた虚な目に影を落とすほど長いまつ毛。

少女のような白く細い体を隠すように大きすぎるパーカーを纏った青年が椅子の上にちょこんと体育座りをして、PCを睨んでいる。

 

俺はその青年の周りに積み上げられた漫画を一冊拾い上げる。

 

「ん?おまえこんなの読んでたのか?」

 

【君にふれるたび恋になる】

 

明らかに少女漫画だ。

読むのは構わないのだが、楓が好むのは王道バトル漫画やスポーツ漫画いわゆる、少年漫画だ。今まで少女漫画を読んでいるのを見たことがない。 

 

「...次の依頼がそれの楽曲だから、」

「またか?流石謎多き天才作曲家【Maple.】様だな。今年入って何曲目だ?そんなに受けて大丈夫なんか?」


主にネットで活動している【Maple.】。

顔出しはもちろん、年齢や性別すら明かしていない。

だが、そんな天才様は今俺の目の前で子供みたいに回転式の椅子に乗りくるくると回っている。

俺の幼馴染 音宮楓 は天才作曲家【Maple.】で、

そして、そんな 音宮楓 に俺はずっと、、

 

片思いしている。

 

「うん、けど、受けたはいいけど大変そうだよ今回みたいな……」

「…恋愛物。か?」

「そう。初めてだよ、こーゆーのは。何度読んでもわからない。それだけ?!ってとこでキュンッ♡とかしちゃって、かと思ったら訳の分からないところでいきなり泣き出すんだよ?!」

 

【Maple.】は今まで幾つものアニメやドラマ、映画などの主題歌を担当してきたがそれらはどれも仲間、友情、家族愛を題材にしているものばかりだった。

しかし、今回の依頼のテーマは楓にとって未知のものである 恋 だ。

だからこそ、この依頼は【Maple.】いや、楓がこの先も続けて行く上で避けては通れない壁になるのだろう。

……あのマネージャーわかっててこれを、、。

 

「でも受けちゃった以上やんなきゃいけないからね!さいっこうのヤツ作ってやんよ」

「そうか、楓がそういうなら俺もなんでも手伝うから言ってくれ。」

 

俺が笑いながらそういうと、楓はじっとこっちを見つめていた。


「ん?どうした?」

「……なんでも手伝ってくれるんだよね?」

「ん、まぁ、俺にできるのなら、、そんな大層なことはできないし、あっ、あれはダメだからな課題やってくr」

「じゃあ!」

 

俺の声は楓の珍しく大きな声でかき消された。

  


「俺と恋人になって、恋を教えて。」

 


今日は5月8日、楓と出会ってちょうど10年と1ヶ月あたり。

俺は、長年の片思いの相手から告白された。

 

 

どうやら、 天才様は恋を知りたい らしい。


 




お読みいただき、誠にありがとうございます。

高校生×下宿生のBLも執筆しておりますので、あわせてお目通しいただけますと大変光栄に存じます。

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