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「ちょっとやめてよ!! 姉さんだって、深酒が元で動物病院首になったくせにっ」
なっ!? すごくプライバシーに関することを聞いてしまったような気がする。いいのだろうか?
「そうだよ。だけど、わたしが現在フリーランスの獣医師なおかげで、今日みたいに動物の命を救えるんだからね。その辺は肝に銘じてなさいよ?」
「はい。ありがとうございます。って、もう。椿姉さんには頭が上がらないよ」
それじゃまぁ、と言って、椿さんが柏手を打った。
「ポンタくんの復活に乾杯しよっか?」
「しません。ダメです。ポンタくんだって、いつ急変するかわかりませんから」
「そんなこと言わずに、ね? ワインならいい? なんならノンアルコールのビールで妥協するからさぁ」
「のん兵衛のために呼んだわけじゃないので。ぶどうジュースならありますが?」
「ほう? なら、それで手を打とう!」
気前のいいトークを投げ合いながら、ふたりはポンタくんを置いて台所へと向かう。
「あ、あのっ。ポンタくんはどうするのですか?」
「大丈夫。その子は生きる意思を見せてくれた。点滴も打ってるし、気になるなら里奈ちゃんが見ていてよ」
いや。あたしド素人なんですけど?
なんて戸惑っていたらカブラくんがもよおしていたことにも気づかず、なんと部屋の中で粗相しちゃった。
「大変!! ごめんなさい、楓さん」
そそくさと片付けようとしたあたしを手で制した楓さんは、ゴム手袋をはめて割りばしを持ってきた。
「指輪、出てるといいんだけど。え〜と?」
「なに、カブラっちは指輪なんて飲んだの? 出る時痛いんじゃない?」
いや、あの。お美しいおふたりの口からそのようなお言葉が出てくることに罪悪感を感じる。
それにしても椿さん。カブラっちって。カブラくん、なにげに愛されキャラなのかしら?
「あったぁ!! よかったねぇ、里奈ちゃん。……どうする?」
「洗ってやりゃいいじゃん。男気出しなよ、楓」
「いや、あたし女だし? いくらなんでも他人の便まで責任が持てません」
「けどなんか、里奈ちゃん見てると洗った指輪をそのまま下水に流しそうな予感がするんだよね。どんくさいから」
み、見破られてる。あたし、ブスなうえにどんくさいんです。そうなんです。
「しょうがないなぁ。今日だけだよ?」
そう言って、楓さんは指輪を洗ってくれたのでした。
受け取った時はさすがに匂いが気になったけど、香りのいい石鹸で洗ってくれたおかげで、すぐにそんなのは気にならなかった。ありがとうございます。
つづく




