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11ー10

 また息を整えながら、手紙を読む。所々字がにじんでいるのは、お父さんの涙かもしれなかった。


[里奈はわたしの一番の宝物なの。そのことをどうかわすれないでね。


そして、どれだけ時間がかかってもいいから、わたしの死を受け止めてください。


借金があるのは、全部わたしの治療費のため。お父さんはギャンブル依存症というお役を演じてくれているだけなのよ? わかってね。


本当はわたしがあなたの花嫁姿を見たかったの。でも、無理だから。天国で見ることにするわね。


里奈。里奈ちゃん。もっとたくさん遊びたかったわね。話もたくさんしたかったし、相談に乗ってあげたかった。お父さんじゃそういうのは役不足だものね。


でもあなたは、立派に成長してくれると信じているの。


人は、生まれて死んでゆくもの。それにあらがうことはできないの。


でもね、気持ちは残る。きっと手出しできないどこかで、わたしはあなたたちを守るからね。大丈夫よ。借金に関しては本当にごめんなさいね。


里奈は、どんな大人になるのかしら? 好きな人はどんな人? たくさんお話したかったけれど、時間はあっという間に過ぎてしまうから、どうかお父さんと仲良くしてあげてね。あの人、ギャンブル依存症という役のせいで嫌われてしまうけれど、本当のことを知ったら好きになれるでしょう?


この手紙を里奈が読んでいるということは、あなたはもう大人になっているっていうこと。だから、どうか無理しないでね。


心からやさしいお父さんと仲良くしてね。


いつかまた、どこかで会えるといいわね。たとえばそれは、いろんな形で。


だからもう大丈夫。わたしはすべてをお父さんと親友に託します。 


大好きで大切な家族のみんなへ。愛を込めて。母より]


 読み終えて、大声で泣いていたら、悟が二階から降りてきて、ティッシュペーパーを箱ごと抱えて持ってきてくれた。


「やっと手紙よめたんだ? おじさんは? まさか外?」


 ようやくうなずくと、悟は嘘だろ、とドアベルを鳴らして外へ出る。


 今度は和也があたしの背に立ち、なにかを言おうとしたその瞬間。


 乱暴なドアベルが残酷な運命を響かせた。


「里奈、電話!! 救急車!! おじさん、ステージ四の胃ガンなんだよ。それは本当だったんだ!!」


 あたしの目の端に、倒れ伏したお父さんの姿が見えた。


 なにこれ?


 全部嘘でしょう?


     つづく

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