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この際だからはっきり言った。あたしが家を出た理由と、実家に帰りたくない理由を。お父さんのことがゆるせないことも。
「父さんな、あれからギャンブルには一切手を出してないんだ」
「嘘ばっかり。なんなの? 病気の妻病院に残してパチンコなんてよくできるよね?」
「パチンコでもしてきなさいなって、言われたからだよっ」
はぁって、頭の中にはてなマークがいくつも浮かんだ。
「毎日毎日病院にこもっていたら気持ちがふさぐでしょう? たまにはパチンコでもしてきなさいよって、母さんが言ったんだ」
「嘘だよ、そんなの」
会社だって勝手に早期退職しちゃっているし、計画性がないのはお父さんの方じゃんか。
「嘘じゃない。あとでそれが、母さんが看取られないための精一杯の言葉だったと知ったんだ。だから、もうギャンブルはしてない」
「再婚相手は?」
「母さんが決めてくれてた。お相手にな、どうかなって話してくれてあった。お前が二十歳過ぎたら籍を入れるという条件でな」
「そんなん、都合良すぎるよ」
バカみたい。いい大人がそんな嘘信じると思ってるの?
悪いことは全部、死んだお母さんになすりつけるなんて、そんなのひどすぎるよ。
「嘘だと思ってもいい。ただ、もう楓さんに頼りすぎてるのが目に見えているから、それでまたお前が楓さんに依存するんじゃないかと心配なんだ」
依存? そんな簡単な言葉を使う?
楓さんはあたしの師匠みたいな人だよ? 依存なんてしてないし、あまえすぎないようにわきまえてるつもりだもん。それでもあたし、依存してるの?
からららん、とドアが開いた。楓さんだった。
「どうかしたんですか? 外にまで声が聞こえてましたけど。里奈ちゃん? どうした?」
楓さんは、冷たい手であたしの頭をやさしくなでてくれた。
そうだよ。依存してるかもしれないよ。でも、今すぐどうとかできないもんっ。
「よくわかりませんが、あたしは里奈ちゃんのこと迷惑だとか思っていませんし、いくらでも居てくれてかまいません。じゃ、あたしは二階に行きます」
静かにそっと告げると、楓さんは二階へとあがってしまった。
微妙な空気が流れる。エアコンがなかったら寒くてどうしようもない寒い空気。
「証拠は?」
あたしはお父さんに聞いた。そこまで言うのならば、証拠ぐらいは残してあってもいいよね?
「覚悟は?」
これは、お父さんの台詞。
「できてるよ。覚悟なんて」
だけど胸がどきどきしてとても苦しいんだ。
カブラくんをなでる手が、震えていることに気づいていた。
つづく




