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11ー8

 この際だからはっきり言った。あたしが家を出た理由と、実家に帰りたくない理由を。お父さんのことがゆるせないことも。


「父さんな、あれからギャンブルには一切手を出してないんだ」

「嘘ばっかり。なんなの? 病気の妻病院に残してパチンコなんてよくできるよね?」

「パチンコでもしてきなさいなって、言われたからだよっ」


 はぁって、頭の中にはてなマークがいくつも浮かんだ。


「毎日毎日病院にこもっていたら気持ちがふさぐでしょう? たまにはパチンコでもしてきなさいよって、母さんが言ったんだ」

「嘘だよ、そんなの」


 会社だって勝手に早期退職しちゃっているし、計画性がないのはお父さんの方じゃんか。


「嘘じゃない。あとでそれが、母さんが看取られないための精一杯の言葉だったと知ったんだ。だから、もうギャンブルはしてない」

「再婚相手は?」

「母さんが決めてくれてた。お相手にな、どうかなって話してくれてあった。お前が二十歳過ぎたら籍を入れるという条件でな」

「そんなん、都合良すぎるよ」


 バカみたい。いい大人がそんな嘘信じると思ってるの?


 悪いことは全部、死んだお母さんになすりつけるなんて、そんなのひどすぎるよ。


「嘘だと思ってもいい。ただ、もう楓さんに頼りすぎてるのが目に見えているから、それでまたお前が楓さんに依存するんじゃないかと心配なんだ」


 依存? そんな簡単な言葉を使う?


 楓さんはあたしの師匠みたいな人だよ? 依存なんてしてないし、あまえすぎないようにわきまえてるつもりだもん。それでもあたし、依存してるの?


 からららん、とドアが開いた。楓さんだった。


「どうかしたんですか? 外にまで声が聞こえてましたけど。里奈ちゃん? どうした?」


 楓さんは、冷たい手であたしの頭をやさしくなでてくれた。


 そうだよ。依存してるかもしれないよ。でも、今すぐどうとかできないもんっ。


「よくわかりませんが、あたしは里奈ちゃんのこと迷惑だとか思っていませんし、いくらでも居てくれてかまいません。じゃ、あたしは二階に行きます」


 静かにそっと告げると、楓さんは二階へとあがってしまった。


 微妙な空気が流れる。エアコンがなかったら寒くてどうしようもない寒い空気。


「証拠は?」


 あたしはお父さんに聞いた。そこまで言うのならば、証拠ぐらいは残してあってもいいよね?


「覚悟は?」


 これは、お父さんの台詞。


「できてるよ。覚悟なんて」


 だけど胸がどきどきしてとても苦しいんだ。


 カブラくんをなでる手が、震えていることに気づいていた。


     つづく

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