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椿さんや、いさおおじさんの言葉が通じたのか、ポンタくんは目を覚ました。そして、あまえたような声でおじさんを呼ぶ。
「おおポンタ!! 元気になったのか!?」
「とりあえず命拾いはしたが、まだ油断できない状態なの。だからポンタくんは今日、こちらのサロンで預かるけどいい?」
どうやら最悪の決断をしなくてもすみそうで安心してしまう。
椿さんも楓さんもかっこいいよ。
それにくらべてあたしはダメだな。
「さてと。いさおおじさんは帰っていいよ。もう殺鼠剤を雑に置いたらダメだからね」
楓さんは強い口調で言いのけると、いさおおじさんはあとは頼みますと言って帰って行った。
ドアが閉まると、椿さんがサロンの周囲を見回し始める。
「それで? 今度は女の子を拾ってきたの? 楓」
「ちょっ、椿姉さん余計なこと言わないでよ。あたしに拾い癖があるみたいじゃない」
「そのままだけど、反論できないでしょ? なに? この子のおかげで配置が完璧だったりする? ちなみにこのフレンチブルドッグの飼い主だよね?」
はっと、あたしは息を呑んだ。まだ自己紹介をしていない。
「あたし、松下 里奈って言います。この子はカブラくんです」
「うん。ちなみにわたしたちは親友ってだけだから、恋愛目的で近づいたのなら帰ってくれる?」
「そんなんじゃありません!! それにあたし、もう行くところがないんです」
へぇ? とにんまりと椿さんが笑う。
「じゃあ楓のために掃除、洗濯、片付けに食事までやってくれたらここに住ませてもらえるかもよ?」
「それさっき交渉したから。もううちで住んでもらうことになってるの。椿姉さん、あんまり里奈ちゃんいじめちゃダメだよ?」
「なんでよ? 可愛い女の子はいじめがいがあるってのに」
可愛くはないです。いやむしろブスだという自覚はあるので、その言葉は語弊があります。
「とにかくさ。いさおおじさん? たんまりとお金しぼり取ってやんなよ? あたしも協力したんだからさ」
「あ〜、もう。聞こえなぁ〜い!」
両耳をふさぐ楓さんがコミカルで笑える。
「里奈ちゃん気をつけなよ? この人、取り立て音痴すぎて動物病院クビになったんだから」
……ある意味、すごすぎるぞ。楓さん。
つづく




