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11ー7

「こっちです。お願いします」


 水道屋さんは椿さんに連れられて二階へあがる。


 男手が必要になるかもしれないからと、悟と和也もついて行く。


 あたしは一階で、お父さんとカブラくんとラブちゃんと一緒にいた。


「お母さんのこと、まだトラウマになってる?」


 意外な角度から切り込まれて、返事にこまった。


「里奈が誰かとお別れするたびに泣いていたのは見ないフリをしてきたけど、さすがにそろそろ大人になって欲しいんだよ」

「大きなお世話。あたし、自分の気持ちと折り合いをつけたら泣かなくなるから平気」

「本当に?」

「なに? お父さん、今日に限ってウザい」


 つい言いすぎてしまった。


「ごめんなさい」


 いいんだ、とお父さんは言ってくれたけど。


「このサロンにいつまでもお世話になるわけにもいかないだろう?」

「それ、どういう意味?」

「約束したはずだよ。自活するから一人暮らしをゆるしたんだから」

「そうだけど。だって、目の前にカブラくんがいたから……」


 だからって、カブラくんのせいじゃないし、ペット禁止って言われなかったら、気づかなかいまま、図太くあの部屋に住んでいたけど。


「里奈には好きな人がいるんだと思ってたんだ。だから、一人暮らしをしたいのかと思っていたのに」

「それはお父さんの方だよ。あたらしいお母さんに悪気はないけど、二人きりにしてあげたじゃん。とう考えてもあたしがお邪魔だもん」


 正直なところ、あたしが二十歳になるまでお父さんが再婚するのを我慢してくれていたことを知った時は悲しかった。


 お母さん以外に好きな人なんて、いて欲しくなかったから。


 なによりそのことを、ずっと隠していたことが悲しくて、ゆるせなかった。


 だからどうしても家を出たかったんだ。


「里奈の気持ちもわかるけど、楓さんの善意にあまえすぎるのはどうかと思うよ? 家賃も払ってないのだろう?」

「その分、給料から引いてもらっているし」

「だけど実際、いくらくらい引かれているかはわからないよね? 父さんな、離れを作ろうと思っているんだ。そこにな、里奈とカブラくんが住めばいいと考えているんだよ」

「ギャンブル依存症のくせに、なに勝手に話進めてるの?」


 腹が立ってたまらなくなった。


 お母さんが死んだ時、パチンコ屋にいたくせに。


 なにちゃっかり再婚相手作ってるの?


 いつからその女と密通してたの?


 結局のところ、それが不潔でゆるせないんだ。だからあたしは家を出たのに、今さらなんなの?


 涙がぼろぼろとあふれてきてとまらなくなった。カブラくんが不安そうにあたしの顔をなめるけど、ごめんね、今はきみをかまうことができないでいるの。


     つづく

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