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11ー1

 結局、白木さんにゴールドカードを渡しそびれてしまった。それを言ったら、楓さんが楽しそうに笑った。


「いや、うちとしてもさぁ。看板娘の里奈ちゃんを横取りされちゃうんじゃないかと心配したんだよ?」


 あ。その顔で言うのは反則です。綺麗すぎるから。そしてとても恥ずかしいです。


「本当に男ってわかんないでしょ? 優しいから好意を持たれてると思うと本気で単なる善意だったりすんのよ」


 一部始終を見ていた椿さんは、まぁそれでも里奈っちも世話になったんだから、次来店した時にでもゴールドカードあげちゃいなよ。って言ってくれた。


「だってそれ、里奈っちがずっと持ってたらつらいでしよ?」

「はい」


 と、白状した。かくして、お父さんたちは今後はしっかり働きますと約束させて、職場復帰が叶った。


「里奈ぁ〜。やっぱり清羅くんはどう?」

「お父さん嫌いっ。ついでにサロンで働いている間はギャンブル禁止ですからねっ」


 はっきりと言ってしまったものだから、お父さんは泣きそうになった。しかし、これはいつもの泣き真似でしかないことを、すでに学習済みだ。


「そんなぁ。ギャンブル禁止だなんて、ひどいよ里奈」


 そんなお父さんを押しのけて。


「じゃあ、おれなんてどう?」

「悟は意地悪な幼なじみ枠から出られません」


 どの口が言うのよ? まったく。


「それならぼくは、大人しくホームページ作成に努めます」

「よろしい」


 この中で唯一和也がまともだったことを知った。


 そりゃそうだ。学校であたしをブスだブスだと言っていたのは悟だけだったんだから。


「いや、おれもさぁ。里奈は和也くんあたりで妥協してくれないかなって思って――」

「あ! カブラくんどうしたかな?」


 そこであわてて席を立つ。


 今日は、カブラくんをゲージから出す日なんだ。


 まだ薬を飲ませなくちゃいけないけど、それでもここまで回復して、最初の頃より体の傾きも小さくなってきているから生命力の神秘を目の当たりにした気分。


 ラブちゃんは和也よりも楓さんになついてしまったので、ちょっぴりさみしそうだ。


 仕方がないので、ラブちゃんの飼い主は楓さんに変更して、ますますうれしそうな楓さんなのだった。


 はぁ。不毛な恋なんてするもんじゃないわ。


 だいたい恋なんて柄でもないしね。


「カブラくん出ておいで」


 ゲージからそっと抱き上げる。その軽さとあたたかさが心地よくて、しばらくそのまま抱きしめる。


 やがて、もういいよとばかりにあたしの顔をなめるカブラくんを床に下ろした。


 最初は顔が傾いていたカブラくんだけど、食欲もあるし、運動機能もそんなに悪くないっていうか、驚異の回復力なんじゃないかな?


「よくがんばったね、カブラくん」


 そうしてまたやさしく抱きしめたら、カブラくんに鼻キスされた。きゃあ、恥ずかしい。


     つづく

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