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10ー6

 浜風ペットサロンに着くと、楓さんが海から上がってきたところだった。


 ほんのりと日焼けしてますますかっこよく見える。


「おかえり、里奈ちゃん。それと白木さん、こんな姿ですみませんが、その節はうちの松下がご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」


 ほぼ直角でお辞儀をした楓さんにつられて、あたしもお辞儀をする。


「いえ、本当にたいしたことありませんから」

「いえいえ。まずはサロンにお入りください」


 楓さんはサロンまであたしたちをいざなってくれる。


 こんな風にされると、やっぱり王子様みたいだな。


 からんからんとドアベルが鳴って、ドアが全開になる。


「どうぞお入りください」


 楓さんに言われて、店内に入った白木さんは、ふうとため息を吐いた。


「やはり、このお店は落ち着けますね。ところで本日休業と看板が出てましたが、よかったのですか?」

「はい。えっと、あたしはシャワー浴びてくるので、あとは松下にまかせます」


 いいよね、とアイコンタクトを送られて、もう多種多様などきどきで胸が張り裂けそうになる。


 それは、アイコンタクトを送ってきた楓さんがいつもよりもさらにかっこいいのと、白木さんと二人きりにされてしまうのと、気まずいのと。そんな感情でぐるぐるしてた。


「あっと。なにか食べますよね? なにがいいですか?」

「え? なんでもいいですけど」

「じゃあ、パスタだったらすぐ出せますので、少しの間お待ちください」

「ちょいとお待ち〜」


 やたらにごきげんな椿さんの声に振り向くと、白衣姿で腕を組んでいた。こちらも本気でかっこいい。


「パスタくらいならあたしが作るから、二人はカブラっちのこと見ていてあげて」

「あの、カブラくんはどんな感じなのでしょうか?」


 白木さんはなんの疑いも持たずに椿さんに質問した。


「うん、麻痺は少しだけ残ったけど、まだ若いから、きっと少しずつよくなると思うよ。だから見てあげて」


 そうして流れ的にカブラくんのお見舞いに行く。


 もう点滴の針は抜かれていたけど、今は疲れているのかよく眠っている。


 カブラくんのいびきが癒しになり、あたしたちの間をふんわりと包み込んだ。


 恋って、こんな感じではじまるのかな?


 そんな風に思ったまさにその時、サロンのドアが強引に開け放たれた。


 雷のように乱雑に鳴るドアベルに、緊張が走る。


     つづく

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