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地下駐車場に戻ると、自分用に買ってあった本谷さんちのメロンパンとペットボトルの紅茶を白木さんに渡す。
「どうぞ、食べてください」
「でも、悪いから」
「白木さんはなにも悪くないです。むしろあたしがその罰を受けるべきだったのに、どうしてあたしの分まで保釈金を払ってくれたんですか?」
「だって松下さん、とても優しいし、なにより早くカブラくんに会いたいだろうと思って」
あって、頭の中に危険信号が浮かぶ。あたし、白木さんのことを好きになってしまう。これ以上一緒にいちゃいけない。
なのに、無一文同然になってしまった白木さんを放っておくことなんてできない。
しかたなく一旦車から降りて、椿さんに電話をかける。楓さんはきっと、まだ海にいるはずだからだ。
『もしもし? どうした里奈ちゃん』
「もしもし、あの。言いにくいんですけど、白木さんあたしのせいで無一文になって、仕事もクビになってしまって、お腹空かせてるんです。サロンに連れて帰ってもいいですか?」
ひと息に説明したら、椿さんの笑い声が聞こえる。
『いいよ。だけど今の説明だと、野良犬見つけたから連れ帰ってもいい? っていう子供みたいだった。本気なんだね、里奈ちゃん』
本気の意味が恋なのだと理解する。
そう、もしかしたらこれが初恋なのかもしれない。白木さんを手放したくない。
『だったら色々準備しておくわ。白木さんの部屋とかもね』
「そんな、楓さんに無断でいいんですか?」
『いいよ。あたしの家具もかなりかさばってるなって気づいたから、いくつか処分してさ。あたしと楓が同じ部屋で寝ればいいだけじゃん』
いいだけ、と言われても。それを嫌だと思う人もいるわけで。
『いいんだよ。カブラくんと里奈ちゃんをたすけてくれた恩人だしさ。白木さんにはサロンでなにか働いてもらおう。その代わり、悪いんだけど里奈ちゃんのお友達とお父さんをクビにしていい? あいつらまともに働いたことないから』
「ああ、はい。そうですよねぇ」
ただ、男手が必要な時には手伝ってもらいたいから、近所のアパートで雑魚寝していてもらうという形をとった。
カブラくんが倒れた日だって、本当はメンズの誰かに運転してもらうつもりだったのにつかまらなかったのだということも教えてくれた。
もしその時、誰かが運転してくれていたら、白木さんが無職で無一文になることはなかったかもしれないのだ。
メンズには悪いけど、働かざる者食うべからず。今回はしっかり反省してもらいたい。
つづく




