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それから白木さんは、警察に出頭して事情を話し、逮捕された。
あたしが動けなかった経緯があるので、あたしは厳重注意となったけれど、あたしの罰金も白木さんが払ってくれた。
こんなにお世話になるなんて、最初は想像すらできなかった。
カブラくんは、目を覚ますなりあたしを見て、甘えるような声を出した。
見かねた楓さんがゲージを開けてくれて、たくさんなでることができた。
触れた瞬間にあたたかかったことがこんなにうれしいと感じたことはない。それが、生きているということだから。
「カブラくん、あたしが気づけなくてごめんね」
「里奈ちゃんが悪いわけじゃないよ。ペットもさ、人間とおなじで突然調子を崩すことがあるんだよ。それを覚えておいて」
はい、と楓さんに返事を返した。
今日は休業日とあって、楓さんはひさしぶりにウェットスーツに身を包んでいる。
「じゃ、波にもまれてきますか」
「お気をつけて」
「うん。椿は部屋にいるから、なんかあったら椿叩き起こしていいからね」
「ふふ。はい」
そう言うと、楓さんはサーフボードを持ってドアを開けた。ドアベルのカラカラいう音が、今日は心地良い。
「カブラくん。生きててくれてありがとう」
あたしが言うと、カブラくんはふがふがと鼻を鳴らした。そして、なでて欲しい時に見せるあまえた声であたしを呼んだ。
そうだ、白木さんにお礼を言わなきゃならない。
電話番号はわかるけど、あたしのせいで逮捕されちゃったからな。
ちなみに、お父さんと悟と和也は今回なぜかこれっぽっちも店にあらわれず、今さら感もあって、顔を出せないんだろうなと忖度した。
なので野郎共には一斉メールでカブラくんは生きてますと送ることができた。
まぁ、それはいいとして。白木さんにあいさつに行かなくちゃいけないのに、なにを持っていけばいいのかさっぱりわからない。
お父さんにはその件で相談に乗って欲しかったけど、まぁ無理か。
白木さんはもちろん、ミルクちゃんのおやつとかでもいいかなぁ?
勝手に訪ねたら違反になるかしら?
でも、それを言ったら白木さんに運転させた時点で違反させてしまったわけだし。
ってかあたし。なんでこんなに顔が熱いんだろう?
「おはよう、里奈ちゃん。ゆうべは眠れた?」
起き抜けでも隙のない椿さんがにこにこしている。
「おはようございます、椿さん。あの、質問なんですけど。あたしが白木さんにお礼を言いに行ったら違反になりますか?」
「ほう。ならないんじゃない? それ言ったら、逮捕までされた白木さんに悪いし。あたしたちもお礼に伺いたいところだけど、ここは里奈ちゃんにまかせるから」
いや、でも、なにを手土産にすればいいのかわからないと言ったら、本谷さんちのパンはどうかな? と教えてもらえた。
なるほど、それならありかもしれない。
つづく




