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9ー4

 幼い頃からお父さんと幼なじみの悟の陰謀でずっとブスだと言われつづけたあたしにとって、カブラくんのようなフレンチブルドッグはまだイケワンの部類に入る。


 だけど、白木さんは年こそあたしより年上というだけでイケメンだし、できるサラリーマンの風貌を保っている方がフレンチブルドッグを飼いたいという理由はなんだろう?


 ミルクくんのシャンプーをしながら、その辺のことを聞いてみた。


「いや、だって可愛いじゃないですか。愛嬌があって」


 うん、あたしもそう思ったけど、白木さんさては、自分がよりイケメンに見せるために、フレンチブルドッグを側に置こうとか、そんな陰謀をお持ちではないだろうか?


「陰謀? とんでもない。ただ、なんてゆうか。骨格も含めて不憫な気持ちになるんですよね。本当はもっとスマートでかっこいい犬種だったんじゃないかと思うと、どうもやるせない。そこに尽きると言うか」

「へぇ? 骨格についても勉強なさったのですね。すごいですね」


 そういうあたしは、最近楓さんに聞いて知ったのさ。なんだか白木さんに一本取られた気持ちになる。


 悔しい。


「でも結局、彼女に押し切られてミルクを選んだわけですけどね。今は、ミルクにしてよかったと思ってます」

「それは、なぜですか?」

「それを聞きますか? なぜかと言うと、もうミルクしか見えないんですよね。他の子たちも可愛いですよ? でも、一番はミルクなんですよね。わかってもらえます?」

「わかります。あたしも、カブラくんひとすじですから」


 よかった、白木さんはため息をついて。


「ぼく今免停中なんですよ。これまでは彼女に頼んで運転してもらっていたんですけど、今日は出張サービスが利用できてありがたいです」

「そうだったのですね? でしたら今後とも、出張サービスを利用してください」

「そうします。その間にまた免許を取りに行こうかなって考えてます。ミルクといろんな場所に行きたいですから」


 そうだ。あたしもカブラくんと旅行したことなんてなかったんだ。年末に慰安旅行を考えてるって楓さんが言ってたから、それを楽しみにしているんだ。


「免許取ったら最初にどこに行きたいですか?」


 あつかましいかと思ったけれど、聞いてみた。


「やっぱり、浜風ペットサロンです。サロンはもちろん、海辺でお散歩なんて、粋ですから」


 おや? 彼女さんとは海辺でお散歩しなかったのかな? なんて、さすがに聞けない。


「彼女、潮風がまとわりついて気持ち悪いってよく言ってたから。ははっ。そんなのも、別れた理由のひとつなんですよね」


 なるほど。別れなんてなにがきっかけになるかわからないもんだなぁ。


     つづく

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