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9ー1

 そして、和也が退院した。だけどそこであたしは不思議なことを思い出す。


 和也は誰からあたしがこのサロンに勤めていると知ったのか、また電話番号は誰から聞いたのか。


 答えはあたしのお父さん以外にいないわけで、問い詰めたらすぐ白状した。


 かなり久しぶりに会った和也は昔とかなり雰囲気が違っていて、ぱっと見は仕事のできそうな男っぽかった。


 そう言えば和也、学生時代はモテてたんだっけ? それなのにどうして悟なんかと友達になったのかって聞いたら、あたしに近づきたかったからだ、なんて言われて顔が赤くなる。


「いいじゃん、里奈ちゃん。和也くん色男だし、つきあうだけでもしてみなよ?」

 

 いやいやいやいや。みんなで力強く頷かないで。


「でも楓さん。和也は派遣社員ですよ」


 そう言ったら。


「おれ、パソコン得意だし、里奈より見やすいホームページ作れますよ」


 そしてかつては営業の担当だったとのことで、これまた仕事の無い日限定で採用が決まってしまった。


 正直、人生で悟と和也しか男がいなかったらどっちを選ぶかってなったら、どっちも選ばないと思うけど。


 そしてさすがはラブラドールレトリバー。ラブちゃんは楓さんの教育を受けて、どんどん色んなことを覚えてゆく。


 一方のカブラくんも、負けじと芸の一つも覚えようとしているけれど、やっぱりそこは無骨すきて、上手にできない。


 あたしとしては、芸なんかを覚えるより、止まれ! とかそういったあたりまえのことをきちんと覚えてくれた方がたすかるんだよな。なにかあってからじゃ遅いから。


 そんなラブちゃんに大事件が起きた。いや、カブラくんにかもしれない。


 すべてはこの日、誠くんがサクラちゃんを連れてきたことからはじまる。


「こんにちは」


 日曜日の昼下がり。最近の誠くんは人慣れもしてきて、学校にも通うようになったという。なにより柳くんという友達ができたのが大きいんじゃないかな?


 柳くんも前ほどトゲトゲしなくなったし、あたしたちにも敬語を使えるようにもなった。


 少年が成長しているのを間近で見るのも楽しいし、不思議な感じがする。


「サクラのお見合い、ダメでした。サクラがお相手から逃げ回ってしまっていて」


 サクラちゃんがお見合い中だというのは知っていたけれど、それでサクラちゃんがしばらくサロンに来てなかったわけだけど。


 ここにきてサクラちゃんがカブラくんに鼻キスをしたところを見てしまって騒然となる。


 サクラちゃん、早まらないで。相手はカブラくんだからっ。


     つづく

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