8ー7
ラブラドールレトリバー。一見すると愛嬌者。カブラくんたちとは違う意味でのやんちゃぶり。
だけど憎めないのは、きちんと反省した顔をするのと、主人へのご機嫌の取り方が上手だからでもあり、反省した姿があまりにも健気に見えるから。
そんなラブちゃんが浜風ペットサロンにやってきて三日後。
お父さんと悟は毎日サロンに出入りしている。
「悪い。ちょっとトイレ貸して」
という、どこも悪びれていない自宅かっ、と突っ込みたくなる態度の悪さ。
和也が退院したら、これに加わるんだろうな。嫌になっちゃう。
「お父さんたちもちゃんと働きなさいよ」
いつの間にか常連客の話し相手として君臨している二人に、あきれながら言うと。
「ともかく、このペットサロンを軌道に乗せなくちゃいけないからな」
という、部外者の癖になんだろう的な物言いをする。
もしかして二人、仕事首になったりとかしてないだろうな?
「ねぇお父さん、経理の仕事どうしたの?」
「や。早めの退職をしたのだよ。わっはっはっ」
「辞めたのか〜いっ!」
そりゃお母さんがかまわないわけだわ。後でお母さんに電話してみよう。
「暇ならうちで経理の仕事やってみませんか?」
「楓さんダメです。お父さんを調子に乗せると、横領しかねないかもしれませんっ」
「いくらなんでもそんなことしないよ。酷いな、里奈は」
「今日まで退職していたことを隠していた人に言われたくありません」
もう、面倒くさい人だなぁ。
「別に隠していたわけじゃないよ。聞かれなかったから答えなかっただけで」
「はいはい。悟は? 実家のお弁当屋さんどうしたの?」
「いやなに。食中毒出しちゃってから再開しても赤字つづきでさぁ」
「ちっ。ニートが二人も油売ってるサロンなんて聞いたことないよ」
まぁまぁ、とあたしをなだめたのはよりによって椿さんと楓さんだった。
「悟くんは軽食くらいは作れるのかな?」
「サンドイッチとかなら得意ですよ。フルーツサンドとか」
「よし、採用」
楓さんが即決したのも仕方ない。なにしろ雑用で忙しいあたしはお菓子くらいしか作れない。だから、厨房に悟が入ってくれるとまかないもおいしくなるんじゃないかって期待したりする。
三人があたしをだましたのはゆるせないけど、ここはあたしが大人にならなくちゃいけない場面だ。
「楓さんがよければそれでいいですけど。本当にいいんですか?」
「うん、いいよ。ついでに里奈ちゃんの恋愛も応援できそうだし、ね」
なんてウィンクされちゃったら、ダントツで楓さんしか見えないんですけども。
つづく




