8ー5
とりあえず、あたしのスマホから和也のスマホに電話をかけてみた。
『もしもし? 里奈っち?』
……和也出てるじゃん。
「うん、あたし。あんた今具合悪いの? 入院してるって本当?」
『うん。なに? まさか悟に聞いたの?』
「そう。ラブちゃんの面倒が見きれないからって、サロンにつれてきちゃったのよ。このままここで飼うということもできるけど、その前にどうして悟からの電話に出ないの?」
そう、まずはそこから。
『出ないわけじゃないんだけど、タイミングがあわないのかな? 病室で電話するの禁止だからさ。せめてメールにしてくれるとたすかったんだけど。なに? ラブちゃんサロンで大人しいの?』
大人しいどころじゃない。そして楓さんからの、ラブちゃんを返したくない圧の強さがすごい。
「大人気だよ。可愛いし、可愛いし、可愛い」
『へぇ。おれとしては、里奈っちのこと、昔から可愛くて可愛くて可愛いと思ってたんだけどな。なんとなく悟に気が引けて、言えなかったけど』
「と、突然なんてこと言うのよ!?」
顔が熱い。和也はすっとぼけたところがあるけど、本来とても気遣いのできるいい友達なのに、そんなこと言われたら照れちゃうよ。
「ちょっと待って。おれからすれば、和也に気がひけて、里奈に告白できなかったんだけど」
おや? これは世に言う両手に花状態? しかも二人の性格は把握している。
「それは一旦置いといて。入院中って、どこが悪いの?」
『ああ、盲腸が破裂寸前だったから手術したんだ。大事を取ってしばらく入院なんだけど、里奈がおれと付き合ってくれるなら、ラブちゃんは好きにしていいよ。もともと里奈のことがわすれられずに飼ったようなものだからな。里奈ってなんか、ラブラドールレトリバーっぽいところあるから』
……そうかな?
「女にもてたいっていう理由じゃなかったっけ?」
『だって。悟に本当のことバレたくなかったからさ。ラブはほとんどしつけてなかったんだ』
つまり、ラブちゃんを通じて嫌がらせをしていたと。
『それなのに悟のやつ、別の子と結婚するとかありえねぇ』
真実がわかると、そんなもんなのかと愕然としてしまうけど。
どうしたものか迷っていたら、楓さんがスマホ貸してとあたしから受け取った。
「もしもし、浜風ペットサロンのオーナーの楓です。里奈さんはまだ迷ってるようですし、その件は退院してからゆっくり考えてはどうでしょう?」
いたって正論をまとめあげてくれた楓さんに、みんなが拍手したのだった。
つづく




