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8ー3

 そもそも。どうして和也が急にラブラドールレトリバーなんて大型犬を飼おうと思ったのかというと、悟いわく、女にモテたかったから、とのこと。


 そこからして邪道だわ、と楓さんは吐き捨てた。


 まぁ確かに、子犬時代は天使だし、あたしもカブラくんに一目惚れしたから和也のこと言えないけど。それでも、ラブちゃんを悟に預けておいて、姿をくらますなんてひどすぎるよ。


 そして今日、ラブちゃんがサロンにやってくることになった。


 マカロンちゃんとの別れ、そしてさらに山茶花さんとの別れを経験した楓さんは、なんだかとてもわくわくしている。


 椿さんいわく、楓さんは大型犬フェチなのだそう。そう言っても、このサロンでラブちゃんの暴れっぷり(あくまで予測の範疇だけど)が大人しくさせることができるのかはまだわからない。


 わかっているのは、楓さんがすごく楽しみにしていることくらい。

 

 和也の方も、ラブちゃんが受けなければならない予防注射はちゃんとやっていたとのことで、そこは少しだけ安心している。


 ただ、本当に大型犬はお金がかかる。薬代なんかも半端ないし、シャンプーも広い場所でやってあげたい。


 そして、ラブラドール特有とも言える(あくまであたしの感想なので、違っていたらごめんね)暴れん坊ぶりはいっそ清々しいくらい。


 動画サイトなんか見ると、反省した顔が映ってたりもする。


 楓さんは、そういう動画もきちんと見ているのだ。さすが。


 だけどどこか憎めないのはあまえ上手だからかもしれない。


 はたしてラブちゃんがどこまで暴れん坊なのかはわからないけれど、それも含めて楓さんは喜んでいる。


 う〜ん、今回は和也を待たなくてもいいかな?


 なんて思っている間に、ドアになにかがぶつかる音がした。


 驚いてドアを開けると、頭を抱えた悟が、必死の形相でリードを持っている姿がある。


 悟を中心として、リードのゆるす限り暴れまくっているこの子がラブちゃんか。


「大丈夫?」

「無理。おれもう本当無理だから」


 そう答えた悟の目の下には、大げさなくらいのクマができている。


「この人、夜でも暴れて部屋の中ぐっしゃぐしゃでさ。彼女との愛の巣のつもりで契約したマンションが台無し」


 ちょいちょい彼女の話が出てくるけど、片付けくらい彼女に手伝ってもらえばいいのに、と言いながら入店すると、ラブちゃんはついに悟の手から離れて自由に走り回る。


「ああ、ごめん。片付けなんて彼女にさせたら全部捨てられちゃうよ。それより……」

「ラブちゃん、いらっしゃぁ〜い!!」


 悟が信じられないものを見るかのように、楓さんに抱きつくラブちゃんがいる。


 楓さんは少しもよろめくこともなく、なんなくラブちゃんを抱きとめているのだった。


     つづく 

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