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7ー5

 カブラくんが震えたままだったので、抱っこしてサロンに戻ると、椿さんがモップがけしていた。


「おお。カブラっち無事だったか。おかえり」


 椿さんに頭をわしゃわしゃなでられたカブラくんはうれしそうに目を細める。


「兄さんは奥の茶の間にいてもらってるけど、どうする? 話できる?」

「うん。大丈夫。あたしもそろそろ変わらなくちゃね」


 ふふん、と椿さんが楽しそうに笑った。


「じゃ、さくさくシャワー浴びてきな。泥だらけで恋を終わらせるのもいいけど、あんたには似合わないよ、楓。最後までかっこつけなさい」


 はぁ〜いと返事をして、楓さんはシャワールームに直行した。


「さて、カブラっちはわたしに任せて。里奈ちゃんも見繕いととのえておいで。一通り終わったらパーティーしよ」


 パーティーか。楓さんの失恋パーティーだなんて、盛り上がるのかしら?


「言っておくけど。いい女は男を振る側なんだよ? 振られるまでくっついてるなんて女の恥だからね」


 おおっ。あたしもいつかまたどこかで恋をすることがあったら、参考にしよう。


 ■ □ ■ □ ■ □


 茶の間でどんな話し合いがおこなわれているのか、あたしたちにはわからなかったけれど、その間に椿さんは山茶花さんの入所する施設に電話をかけて、迎えに来てもらうことになった。


 そしていざヘルパーさんが到着すると、山茶花さんは青白い顔でサロンを後にしたのだった。


「はぁ〜。やっと初恋を終わらせることができたよ」


 楓さんは深くため息をついてほほ笑んだ。その笑顔は、いつもより少しだけあやしく輝いている。


「ちゃんと振った?」

「振ってやった。椿姉さんには悪いけど、もう巻き込まれたくないから、かなりがっつり振ったから、もう来ないと思う」


 仕方のない兄さんだな、と椿さんはささやいた。


「兄さんはさ、楓の気持ち知ってるから、いつでも楓が待っていてくれると思ってたんだよ。なのに、楓の方が精神的に大人になっちゃったから、もうあきらめるしかないよね。治験でもなんても自由だけど、その都度失望して楓に八つ当たりするのはもう見たくないもん」


 つまりだよ、と椿さんはつづける。


「山茶花兄さんは気づいてないかもしれないけど、楓を母親のように思っていたんだよね。絶対に守ってくれる、裏切られないんだって。でも、人は変わる。だから兄さんも変わらなくちゃね」


 なるほどなぁ、と強く降っていた雨が小雨になってきて、あたしたちはあたたかいコーヒーを飲みながら、それぞれの思いにふけっていた。


     つづく

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