1ー5
「おまたせ。……わお。すごいや」
楓さんはお風呂から出てくるなり、ため息をついた。
「すごい!! プロのお仕事なみに完璧な配置がされてる!! 里奈ちゃん、やっぱりうちで働かない? お給料は満足に出してあげられないかもしれないけど、三食食べてもらえるし、ここで寝起きできるのなら、家賃はいらないから。ね? お願いだからうんって言って! 他の部屋も好きに片付けていいからっ!!」
お風呂上がりの楓さんはまたえらく艶っぽくて。湿り気を帯びた髪が襟足の短い黒髪を艶かしくシャープな顎の輪郭をたどる。
女性だとわかっていても、どきどきしちゃう。
それに、アーモンド型の瞳で熱っぽく見つめられたらもう!!
「わかりました。あたし、住み込みで働かせてもらいます!!」
「よかった。朝食はこれから作るよ」
「手伝います」
くん活で忙しいカブラくんを放っておいて、楓さんの後へつづく。キッチンはドアの向こう。つまり、開けられるドアの向こう側だったのだけど。ここもやはり物が散らかっている。
「ごめんね、本当。あたし片付け苦手でさぁ。顧客も逃げちゃうほどなんだよねぇ」
「ちなみに、ペットサロンってどんな仕事なんですか?」
「ん〜?」
楓さんは、形のいい唇を悩ましく歪める。
「ペットのお悩み相談に近いかなぁ? 後はトリミングやお散歩代行、ペットホテルも兼ねてたんだけど、散らかっていたからどれもまともにできなくて困ってたんだ」
「なるほど。それでカブラくんのことも心配してくれていたのですね」
「そうなのよ」
そう言うなり、楓さんは冷凍庫からブロックの氷を取り出し、ミキサーに入れる。
「あの、もしかして朝食って?」
「そう。スムージー。野菜はご近所さんからもらうんだよね。米は今きらしてるけど。炊飯器もないし。かなりの極貧生活だけど、いい?」
「ちょっといいですか?」
いったんお断りをしてから、冷蔵庫をのぞくと、まんまと野菜とヨーグルト、お酒といったもので埋まっている。
「あ。味噌がある。よかったらあたし、お味噌汁作りましょうか?」
って、え? 崇められてる?
「里奈ちゃん、お味噌汁作れるの? どこの女神様?」
「そんな、大げさですよ。野菜は使ってもいいんですよね? だったらスムージーよりお味噌汁の方が身体にやさしい気がします」
って、まだ崇めてるし。こんなに綺麗な人に崇められると、なんだか胸がざわついてしまうのだよね。複眼、複眼。
つづく




