7ー4
公園にたどり着くと、カブラくんがおびえた表情を浮かべてトンネルの中で震えていた。
雨がひどくなってきている。
あたしは任せて、と言った楓さんを信じてカブラくんの様子を伺う。
と、同時に。トンネルの反対側から出てきたらいけないから、そっちで通せんぼした。
「カブラくん、怖い思いをさせてごめんね。おやつあげるよ。カブラくんの大好きなビーフのジャーキー」
幸運にも、今のところ雷は鳴っていないからいいものの、それでもカブラくんの震えは止まらず、一歩も動けないまま失禁していた。
「う〜ん? じゃああたし、そっちに行くよ? いいよね、カブラくん」
楓さんはカブラくんのために、子供サイズのトンネルの中をもぐって行った。泥んこになるのも覚悟の上だなんて、とてもできることじゃない。
あたしも感心してばかりじゃなく、カブラくんがこっちに走って来てもいいように、トンネルの中に体をねじ込ませる。
ちなみに、あの騒動の最中だったものだから、あたしはおやつを持ってくるのをわすれてしまった。そこはさすが楓さん。いつも持ち歩いているんだな。
あたしも、これからはおやつを持ち歩くようにしよう。
「カブラくん、怖くないよ。おうちに帰ろう。みんな心配してるよ」
そして、カブラくんはいつもはいかつい目を完全に下げたまま、くぅ〜んと悲しそうに鳴いた。やっぱり心細かったんだね。
そして、楓さんの頑張りでカブラくんは保護された。すぐにリードをつけて事なきを得たけれど、これGPSがついてなかったら、もっと大変な事になっていたかと思うと本当によかったと胸をなでおろした。
「本当にごめんね、カブラくん。それに里奈ちゃん」
「え? あたしもですか?」
「そう。なんだかかっこ悪いところを見られちゃったし、挙げ句こんなことにまでなって。いい年して恥ずかしいよ」
持ってきたタオルでカブラくんを包んで抱き上げると、泥まみれになった楓さんが、また泣きそうになっていた。
「恋愛って、よくわからないな、あたしには。向いてないのかな?」
「そんな。そんなことありませんよ? 楓さんは綺麗ですし、やさしいし、それになにより動物の気持ちによりそってくれるから。だから、今日の楓さんも全然恥ずかしくもなければかっこ悪くもありません!! っていうか、毎日かっこよすぎて鼻血が出そうです」
あ、言い過ぎた。でも、楓さんが顔をくしゃくしゃにして笑うからうれしくて。
「山茶花兄さんとも、そろそろけじめをつけなくちゃね」
そう言って、鼻をすすったのだった。
つづく




