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感染症と言っても、人間と犬とではそこそこ違うと思うけど。
それからどうなったんだろう?
「兄ちゃんはそれが元で歩けなくなった。そして?」
「リクの白い毛並みは緑色に変わった。いわゆる真菌性のカビみたいなものなんだけど、あたしたちは山茶花兄さんがいつまた自殺しようとするかヒヤヒヤしてたから、リクに気がつくのが遅れちゃってね。本当、遠縁の親戚なのにごめんねって思った」
「楓が悪いわけじゃないよ。家族のわたしたちが気づくべきだったんだから」
けど、自殺だなんて。そんなことがたびたびあったら、たしかにリクくんの病気に気づけないよね。
「結局、山茶花兄さんは施設に入ることになり、リクも手当てが遅れて亡くなってしまったんだよ。それでね、こういうサロンみたいな場所があったら、世間話からペットロスまで相談できるじゃない? それであたしも猛勉強して、調理師免許に獣医師、トリマーの資格なんかもとって、今に至るってわけ」
その話、もっと突っ込んで聞きたかったけど、失礼にあたるから聞かないでおいた。
だけど、そうだよね。ペットロスになるほどの強い思いを和らげてあげたいって思うし、家族のことで相談したりしたいよね。
「で、両親がレストラン辞めるってんで、このまま店を改装したはいいけど、なにぶん片付けが苦手でね。里奈ちゃんに会えなかったら、今ごろ破産してたかもしれない」
「いやいや、あたしはそんなつもりはありませんから」
そうかぁ。人に歴史ありだよね。そりゃお酒を飲みたくもなるよね。
「だから今日は三回目の失恋記念日。一回目は山茶花兄さんに失恋して、二回目はリクとの別れ。三回目の今日はマカロンちゃんとのお別れ。でもこれはかなしい別れじゃないから、打撃少ないけど。つらいはつらいよね」
ぐびぐびとビールをあおる楓さんが、どこかやけっぱちのように見えなくもない。
「でも、歌子さんとの約束があるから。マカロンちゃんのあたらしい家庭が決まってよかった」
「強がってるけどさ。楓って、いろいろとこじらせ気味だよね。柳のことも含めてさ」
はぁ〜、と楓さんが大きくため息を吐いた。
「本当に、自分の性格が嫌になるけどしょうがないよね。他人になれるわけじゃないんだし」
「それでもきちんとさばけてるからたいしたもんだよ、楓は」
椿さんと楓さんは本当に仲良しで、なんでもわかっているんだなあって思った。
あたしもいつか、二人の仲間として加わることができるだろうか? そのためにはもっと勉強して、動物たちの気持ちがわかるようになりたいな。
つづく




