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ステージ四の胃ガン。それは、かなり厳しい状態だと推測する。
だからって、お友達さんのお子さん側の気持ちはどうなるのだろう?
「それと、清司って言うんだが、そいつの息子がちょうど里奈と同じ年でな。時々あらぬ妄想を抱いてはお互い連絡を取り合っていたんだ。
それはまた、勝手なことを。清司さんには悪いけど、なんとなく拒否感が否めない。
「そんなこんなで今度清司の息子の清羅くんに会ってみないか?」
「はぁ!? なにを勝手に」
「お互いの孫を抱いてみたいんだよ。父親としては」
むぅ。そういうの切り札にされちゃうと困るし、断れないってわかって言ってるよね?
「まぁ今は女性として生きているようだが、まだ手術はしていないらしいから、文明の利器でなんとかなるかもしれんし」
……しれっとなんか言った? ねぇ、しれっと言ったでしょう? 現在女性として生きている人の子供を産めっていうのはそれはまたお互いにとってとんでもないことなのではないかい?
「それで、これから清羅くんがここに来る予定なんだが、どうする?」
「呼んだの!? はあっ!? なに勝手に段取りしちゃうかな? あたしの意見は関係ないって?」
「そうは言ってないよ。ただまぁ、ステージ四の胃ガンだしな」
「病気を切り札にするなっ。あたしたちの気持ちは無視ですか?」
「心配するな。清羅くんはそれはとてもやさしい子だと聞く」
ダメだ。話にならない。こんなんじゃあたし、過去のトラウマ以上のトラウマを抱えることになりそう。
側で聞いてた楓さんがきゃらきゃらと笑う。今はその笑顔にとてもたすけられている。
「こんにちは」
ちりりりんとドアベルが鳴って、中性的な声がこちらに向かって来た。
「あの、もしかしたら?」
「はい。松下です。こっちは娘の里奈です」
それは、どこからどう見ても女性でしかないわけで。
「はじめまして、清羅です」
「は、はじめまして、里奈です」
どうするんだよ、お父さんっ。ステージ四の胃ガンがなければ、いらぬ妄想の部分でブチギレてたわ。
「と、言うわけで。こちらがカブラくんです」
仕方なく、カブラくんのコミュ力に頼ることにした。困ったらカブラくんね。
「そして、マカロンちゃんです」
楓さんたちも話を聞いていたせいか、遠巻きにあたしたちの様子をうかがっている。
「なでてもよろしいですか?」
「もちろんです」
清羅さんはとても美しい所作で手を出すと、カブラくんを虜にするほどのなでっぷりを見せつけてくれた。
「とっても可愛らしいですね」
え〜!? カブラくんがよそゆきの顔してすましてるのが、なんかすごく嫌ぁ〜。
つづく




