6ー2
事の始まりはお父さんだった。
お父さんはちょっと、いやかなり個性的な顔をしている。よく見ると、どこかカブラくんに似てないこともない。
そしてあたしは例にもれずお父さん似。
……あたしもカブラくんに似ているのかな?
そんなわけで、子供の頃から事あるごとにお父さんはあたしをブスだのぶさいくだの言ってけなすものだから、それがすり込みになって、心までおブスになってしまった。
最初こそお父さんを叱っていたお母さんだけど、途中で飽きる程度にはしつこくマイナス発言をするものだから、もう華麗にスルーされてしまって、あたしを庇う人がいなくなってしまった。
なので、学生時代もブスだの原始人だの、相当な悪口を言われたものの、女の子からはそうでもないのにね。とか、個性的でかわいいとか、遠回しにブスだよねって言われているようなものだった。
なので、前の会社で受付嬢になった話をしたら、お父さんにげらげら笑われたので、その後実家には帰っていない。
用がある時は、お母さんに会うくらい。
だから本当は、サロンにお父さんを入れたくないのだけど、入り口でこれ以上騒がれるのは営業妨害なので、ふつうに入ってもらうことになった。
「いらっしゃいませ。ああ、里奈ちゃんおかえり」
楓さんはあたしを見るなり、卒倒するほどのきらきらの笑顔で対応してくれた。
そうしてお父さんはというと、楓さんをじっくりと眺めた後、例のごとくあたしをブスだと言いそうだったのでさえぎった。
「みなさん、この人あたしの父です。で? お父さんはなにしに来たの?」
「うん? ああ。借金のカタで里奈を嫁に出さなきゃならんのだが、断られそうだな」
「じゃあ帰れ! すぐ帰れ!! 本気で出てけ!!!」
また借金かよ。もう、お父さんのギャンブル好きは歯止めが利かない。今のご時世、ギャンブル依存症には目の毒になるものしかないのだ。
「冗談だよ、里奈。実はな、父さんの昔の友達と子供の頃約束していたのを思い出してな」
他のお客様がいない時間帯でよかったけど、今度はいったいなんの話よ?
「お互い子供が生まれたら、結婚させようなって話があったんだよ。すっかりわすれてたんだけどな」
「だったら永久にわすれたままでよかったのに」
「里奈手厳しいな。母さんみたいだ」
「うるさい。そんで?」
「そいつが、ステージ四の肝臓ガンでな。昔の夢を叶えてやろうかと思って」
ちょっと待て。なんとなく責任重大じゃないよ。
つづく




