6ー1
浜風ペットサロンは、獣医兼お悩み相談、トリミングやお散歩代行なんかも含めて最近は軌道に乗ってきている。
そんな気がする。
なぜなら前よりお茶が無くなるのが早いし、本谷さんのパンも人間用とペット用で販売しているけど、在庫はほとんど残らなくなった。
愛猫のルビーと悲しいお別れをした本谷さんだけど、オウムのオーちゃんを引き取ってからというもの、とても元気になってきた。
カブラくんは、まぁ以前よりかはやんちゃがなりをひそめているけれど、鈴木さんちの柴犬サクラちゃんがお見合いをしていることを知ったら荒れるだろうか?
誠くんもあれからうちに通うようになって、柳くんといいコンビになってきた。最初はよそよそしかったおば様たちも、健全なイケメンボーイズは複眼だからとよろこんでくれるようになった。
複眼はいいけど、あたしはますます自分の顔を鏡で見るのに勇気が必要になった。
なにしろ見る角度すべてに美形がいるものだから、目が肥えすぎて鏡を見るたびにがっかりしているのだ。
今回はそんなあたしの、どうでもいいかもしれない与太話であります。
いつものようにカブラくんとマカロンちゃんのお散歩をすませてサロンに戻ってきたら、なにやらあやしげな人影がある。
「あの、なにか用ですか?」
「え? ああ、こちらに……里奈っ!?」
「お父さん!? どうしたの、こんなところで」
いやその、と口をにごしたお父さんは、里奈もそれなりに大変なんだよなと口の中でつぶやいた。
「里奈、お見合いしないか?」
「お断りします」
「早っ。断るの早っ。なんなら語尾にかぶせてきたし」
お父さんと話をするといつもこんな感じになってしまう。まったく、お笑い芸人だってここまでのリアクションしないってのに。
「まぁいいわ。とりあえず入ってよ」
「おう、悪いな。そのぶっさいくな犬がカブラくんか?」
「ぶっさいくでわるかったわね。カブラくんだよ。こっちはマカロンちゃん」
犬もぶさいくだと大変だよな、なんて言ったものだから、なでようとしたお父さんの手をカブラくんは容赦なく噛みついた。
「痛いっ。飼い主の質が問われるな」
「うるさい。口が悪いお客様は拒絶するだけです」
言っておくけどねぇ、とあたしはお父さんに宣戦布告する。
「あたしがブスだってことをたびたびお父さんが口にするから戦意喪失するようになったんじゃん。カブラくんだって、人間の言葉くらい理解してるよ。あたしたちにあやまってよっ」
ドアの前で怒鳴らなければよかったと気づいた時には、お父さんが土下座をした後だった。
久しぶりに感情が爆発してしまった。
なにを隠そう、あたしのトラウマはお父さんだったりするのだから。
つづく




