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むぅっと唇を尖らせた柳くんは、ものすごい速度でメールを打ち始めた。
[幻滅なんてしないよ。ぼくがぼくの意思でここにいるのに、なんでそんなことを言うんだよ!? あと、サクラちゃ可愛いから、サロンではみんなの人気者なんだぜ。ぼくだって学校でケモノ臭いってハブられてるけど、気にしないんだ。それだけのこと。だから出てこいよ。サクラちゃん、ぼくにもなでさせてよ。おばさんをひとりにさせるなよ。あんたがひとりでいる必要なんてないんだよ。なんならぼくが友達になってもいい。一緒にご飯食べたり、サロンで遊んだりしようぜ? それで将来、ぼくの姉さんたちみたいに、一緒に獣医になって働こうぜ]
すごい。若いってなんて柔軟なんだ。これでもいじけてたりしそうだけど、どうかな?
「おばさん、ぼく、誠くんの部屋の前に行ってもいいですか?」
「いいけど。どうするの?」
実は、と柳くんはカバンの中からジャンガリアンハムスターのボタンちゃんを取り出した。
「こいつを見せてあげようと思って」
なるほど。同学年で動物好きなんだから、もっとたくさんの動物とふれあいたいよね。
柳くん、グッジョブ。というか、いつの間にボタンちゃんを仕込んでいたんだろう?
[これからハムスターのボタンを見せにいくから。出たくなくてもいいけど、出てきたらなんにも聞かずにボタンと遊んでいいよ]
まだ返信がないうちに素早く入力すると、柳くんは、どこに部屋があるんですか、とおばさんに聞いた。
おばさんは、二階の一番奥の部屋と教えてくれたけれど、その前にサクラちゃんが階段を降りてきた。
「浜風さん、ぼく……」
「柳でいいよ。ボタンと遊んでいいから、サクラちゃんなでてもいい?」
「うん」
階段から一段ずつ降りてくる音がする。
やがて、青白い顔の誠くんがあらわれた。背は誠くんの方が柳くんよりずっと高かった。
「ハムスター、初めてさわるんだけど、どうすればいいの?」
「うん、なでてあげなよ。サクラちゃんにするみたいにさ」
ここは、同学年同士でぎこちなく話が進む。むしろ、あたしたちが余分だったみたい。
「あ、里奈さん。カップケーキ誠にあげて」
いきなり呼び捨てにされたけど、誠くんはそんなに驚かなかった。
「この姉ちゃんどんくさいけど、料理の腕は確かなんだぜ」
この時初めて柳くんに褒められた!! 色々な感情がからまって、むずがゆくなったのだった。
つづく




