5ー8
翌日。事前に打ち合わせた通り、鈴木さんのお宅に伺うと了解を得た上で、柳くんと合流。後、すぐに鈴木さんの家に向かった。
あたしが作ったカップケーキは、すでに楓さんたちに毒味してもらって、あまさがちょうどいいと褒めてもらったんだ。
どんくさいあたしにも、特技があってよかった。
ピンポーンとチャイムを押すと、鈴木さんがあらわれた。
「どうぞ。お入りください」
初めてのお宅訪問にどきどきしながらも、気前よくスリッパまでそろえてくれることに感動する。
「誠はサクラと部屋にいます。今、呼びますから」
「いいえ。無理しないでください。あたしたちが勝手に来ちゃったので、勝手に部屋の近くまで行ってもいいですか?」
はい、それはもちろん、と鈴木さんは頷いた。
「あの、誠くんはケータイ持ってますか?」
「ええ。それで連絡を取り合っているのです」
「それならぼくが、電話をかけてもいいですか?」
すかさず柳くんが積極的に話しかけるアイデアを浮かべる。
「かまいませんけど、出ない時もありますので」
「それでもいいんです。番号を教えてもらえますか?」
柳くんは、誠くんの電話番号を登録すると、すぐかけてみる。
でもやっぱり、出てはくれない。
それなら、とメール機能を利用して、文章を送ることにした。
[誠くんへ。ぼくはとなりのクラスの浜風 柳です。やなぎと書いてりゅうと読みます。実は、ぼくの姉さんがペットサロンを経営していて、サクラちゃんとおばさんは常連客なのです。カップケーキを作ってきたので、よかったら食べてください。また、ぼくでよければいつでも連絡してください。お願いします]
結構な長文になってしまったけれど、柳くんは迷わず送信した。
この文章からも、柳くんが本当はとてもいい子だということがわかる。
最初に会った時は、お互い誤解してとげとげしていたものね。それがなくなるってことは、大人になったっていう証拠だもん。
柳くんも動物好きだし、誠くんとは話が合うと思うんだけどな。
しばらくして、柳くんのスマートフォンにメールの返信がきた。
相手はもちろん誠くん。
[浜風さん、わざわざ家まで来てくれてありがとうございます。ぼくはまだ、学校には行きたくありません。幻滅したでしょう? さようなら]
あら。いきなり心を閉ざしちゃったか。
だけどその時。柳くんの瞳が一段と輝きを増したのを見逃さない。なにか策があるのかな?
つづく




