5ー7
あたしは柳くんと誠くんのことを楓さんたちに話して聞かせた。
楓さんはなんだかなと言って口をとがらせた。楓さんは正義感の塊だから、きっとすごく胸糞悪いんだと思う。
椿さんも、無抵抗な相手をいじめるなんて最悪、と吐き捨てた。
学校という特殊な箱の中につめこまれたら、いじめくらいあるのかもしれないけど、そんなのはやっぱりない方がいいに決まっている。
「具体的にどんないじめ?」
楓さんは正義の人スイッチが入ってしまっているから、さすがの弟くんもたじたじだ。
「悪口なんて当たり前だし、実際彼が関わっていないことまで責任背負わせたり、あとは教科書とか盗んで、ぎたぎたにしたり」
「はい、待った。それをあたしの可愛い柳くんは、黙って見ているだけなのかい?」
「やめてやれよとは言ったけど、四六時中くっついているわけにいかないし、なんならぼくのいない場所でなにかされてることもあるしで。先生も手が出せないんだ」
「教師失格」
短く吐き捨てた楓さんは、あたしの手作りクッキーをばくりと食べた。
「明日、みんなで行ってみない? 誠くんに会いに」
は? とか、へ? とかいう言葉は、あたしと柳くんからしか出てこなかった。
「んなもん、行くに決まってるじゃんっ」
椿さんも、こういう時は強気だ。
「決定!!」
「ぼくは?」
「学校終わったらに決まってるっしょ?」
可愛らしくつんととがった鼻を指で弾かれて、痛さにもだえる柳くん。本当に楓さんと仲良しなんだなぁ。
「もうさ、柳が友達になりな。ってか、専属のボディガードやってあげな。ね?」
「いいけど。学校、来るかな?」
「来るまであきらめずに通うよ」
楓さん、本気だ。もしあたしが誠くんなら、こんなに思ってくれる人がいるのを喜ばずにいられない。
だけど相手は中学生。難しい年頃の男の子。
少しでもあたしたちが味方だよって教えたくなるけど、無理は禁物。カブラくんとマカロンちゃんは留守番していてもらおう。
せめて、このサロンに来てくれたらうれしいのにな。
人は、悪意のない悪意を相手に投げることがある。その悪意に心を乱されないために、あたしたちは日々生きるけれど。
それを中学生に期待するのはどうかしている。
だって、守ってあげなくちゃいけない存在だもの。
うん、あたしも微力ながら、カップケーキを焼いて持って行こうと決めたのだった。
つづく




