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人の口に戸は立てられない、とはよく言ったもので。あたしたちも結局、鈴木さんちの引きこもり少年誠くんがボーガン事件の犯人だと思っていた。
にぎやかで話好きな鈴木さんが痛いところを突かれて、急に帰ってしまったものだから仕方ないけど。
もう一人の話好きなおばさまは、ハムスターを買いに来たとのことで、柳くんのボタンちゃんを狙っていたから丁重にお断りした。
柳くんもちょうどその場にいて、ぼくのボタンなんですけど、とむくれていた。
おばさまも悪びれず、少しばかり、というか、他にお客様がいなくなる程度に世間話を喋り倒したあげく、帰って行った。
「お茶の用意します」
なんだか胸糞悪くなって、椿さんが分けてくれた高級茶葉の用意をし始めた。
すぐ隣で、柳くんが手伝ってくれている。最近の柳くんは、ちょっぴりお兄ちゃんになったみたい。
「さっきのおばさん、ブラックホールみたいな人でしたね。喋り倒してなにも残ってないっていう」
「本当だね。鈴木さんちの誠くんのことまで持ち出したから、なんかこうひやひやしたよ」
誠くん? と、柳くんが首をかしげる。
「もしかして、サクラって名前の柴犬飼ってるあの誠くん?」
「そうだけど。知ってるの?」
「ああ。あいつ、クラスでいじめにあってたんだ。それで、学校休んでるんですけど、動物好きな良い奴なんですけどね」
前に一度、ジャンガリアンハムスターについて話をしたと言う。
誠くんは、犬だけじゃなく、様々な動物に詳しいのだそうだ。
それだけ繊細な心を持っているってことなんだろうけど、どうしたものかな? お母様、急いで帰ってしまったし。これはしばらくサクラちゃんとうちに来る回数が減るかもしれない、なんて思っていたら。
「ぼく、誠くんの番号知っているから、かけてみましょうか?」
「待って。なにを話すの?」
「きみが引きこもっている間に、ボーガン事件の容疑者にされていたんだよって」
それはダメだ。あたらしいいじめ要素になってしまう。
それにしても、この前の斎藤容疑者といい、クラスのいじめっこといい、どうして動物好きな心優しい人を悪く言えるのかな?
ひょっとして、言い返さないからエスカレートしているのだろうか?
実は、あたしも過去に地味顔が元でいじめられた経験があるんだけど、時間がすぎたら誰も相手にしなくなってた。
無理に友達ぶるのはきつかったので、ちょうどよかった。
とはいえ誠くん。どうすればいいんだろう?
つづく




