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5ー4

 警察に連れて行かれる斎藤のことを、楓さんが本谷さんに電話で伝える。


 この店にいたすべての人間が証人となり、オウムのオーちゃんも警察が連れて行ってしまった。


 斎藤は以前からおばあさんが認知症だと知った上で金の無心をしていた。


 子供のいないおばあさんにとって、オーちゃんだけが心の支えだったのに、遊ぶ金欲しさにオーちゃんを誘拐し、おばあさんをたぶらかしてボーガンを渡した。


 そのうえでおばあさんに罪をなすりつけて、犯人に仕立て上げた。


 斎藤は逮捕されたものの、すぐに釈放されるところだった。


 そうならなかったのは、彼の部屋にはボーガンだけでなく、サバイバルナイフやスタンガン、散弾銃に至るまで危険なものがたくさん押収されたからだ。


 斎藤は人から預かったものだ、と繰り返していたが、動物虐待の前科があることが露呈して、あらためて逮捕された。


「まったく。お金に心を譲り渡した人間のあわれさよ」


 楓さんは退屈そうに肩ひじで自分の顔を支えて言った。


「人間以上に動物は嘘つかないからね。ま、悪党にはそんな心の機微まではわからないんだろうけど」

「本当。本谷さんもそのおばあさんも気の毒。本当は宝くじなんて当たってなかったんでしょう?」


 楓さんにつづき、椿さんが言い募る。


「そうなのよ。たまたま土地持ち成金だったから、こういうことに巻き込まれたってだけで、その時点でおばあさんは認知症を発症していたんだから。まったく悪党には虫唾(むしず)が走るわ」


 オーちゃんも、変なおじさんに誘拐されて大変だったんだろうな。なんたって斎藤は自分の残り飯をオーちゃんに与えていたんだから。


 おばあさんも、オーちゃんを誘拐されて悲しかったんだろうな。斎藤なんかの言いなりになって、誤認逮捕されたあげく、警察病院で亡くなったわけだから。


 それに、本谷さん。ルビーちゃんのお墓参りには、みんなで行った。なんとも巻き込まれ感が半端ない。


 後日。本谷さんがふわっとあまいパンの薫りをさせてドアベルを鳴らして入店してきた。


「よかったらみなさんで召し上がってくださいな」


 ありがとうございますって、受け取ったけど。本谷さんもやるせなさが残る表情だ。


「はぁ〜。みなさんにはお世話になりました」


 あなたはまだ、猫を飼いたいですか?


 楓さんの質問は、あまい薫りに包まれて。


「もちろんよ。でも今は、オーちゃんの飼い主になりたいわ。鳥なんて飼ったことないけど、たくさん勉強したから、ここに連れてこられたらまた呼び出していいわよ」


 そうなのだ。警察でオーちゃんを預かるのは、ほんのわずかな間だけ。だから、期日が明ければ、オーちゃんはここに戻って来る。


「動物に罪はないもの、ね」

 

 寒風もなんのそのという表情でウィンクをした本谷さんが、とてもたのもしく見えた。


     つづく

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