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楓さんに連れられて、草が伸び放題の怪しい場所に着いてしまった。
「ごめんね。最近草刈りしてなくてさぁ」
楓さんはなにげにそう言ったけど。半端ない雑草が生い茂っている。
その雑草の中心地点にそのボロ家……もとい、浜風ペットサロンはあった。
「あ、それじゃあ楓さんが浜風ペットサロンのオーナーさんですか!?」
やった!! ついに見つけたぞ。
「うん。そうだけど。ひょっとして、うちを探してた?」
「はいっ。あたし、カブラくんを飼うまで、アパートがペット禁止だって知らなくて。追い出されてしまったんです。おまけに仕事も首になっちゃったし」
べつに、カブラくんのせいじゃないんだけど、どこか連鎖的につづいている不幸は、カブラくんが一因してるんじゃないかって気持ちになっているのもまた本音なんだよね。
「だから、できればカブラくんを楓さんに預かって欲しいなって思ってるんですよね。ごめんなさい。自分勝手ですよね」
「うん。そういうの好きじゃない。自分勝手だよ」
痛い一撃はすぐに返ってきた。
「今のを聞いている限りでは、遠回しにカブラくんのせいだって言っているようなものじゃない? 里奈ちゃんは自分の不注意からペット禁止をわすれていた。それなのに住む場所を追い出された。カブラくんのせいで」
「ちが……」
「違わないでしょ? 仕事を首になったタイミングも、カブラくんのせいにしている。だったら一層のこと、住み込みでうちで働けばいいじゃん。あたし、自炊も掃除も苦手だし」
そんなことをさらっと、チクッと言ってくれるのは、楓さんしかいなくて。
正論がこんなにあたたかいんだってこと、はじめて知った。涙がこぼれてきた。
「あ。ごめん。意地悪を言ったつもりじゃないんだ。泣かせてしまうなんて」
「ちが……。あたし、自分勝手で。楓さんの言う通り、全部カブラくんのせいにしてた。ごめんね、カブラくん」
「あう〜? わん!」
「うん。ご飯食べよ。ね? 家の中散らかってるけどさ。食べないときみの大切な指輪、カブラくんから取り返すの大変になっちゃうから。だから、とにかく泣きやんで?」
あたふたとサロンのドアを開ける楓さんが、天使のように美しく見えた。
今日あたしがわかったことは、あたしがどんなに自分勝手だったかってこと。そのせいでカブラくんが荒ぶっているのかもしれないことも学習した。
やっぱり楓さんは美しいだけじゃなくて、すごい人だということがわかった。
つづく




