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動物病院はこの周辺にもたくさんあるせいか、浜風ペットサロンのお客様の足は鈍く、今日はついに冬のトリマー祭りを開催することになった。
楓さんのおかげで、あたしもトリマーの資格を取ることができたため、朝から大忙し。
「こんなことなら月一でトリマー祭りをやってもいいかなぁ?」
なんてぼんやりと楓さんが言って、遅い昼食に舌鼓を打つ。
「あたしはちょっと無理です。資格取るのと実戦ではまったく違うんですね」
あたしがそう言ったら、みんなに笑われた。
そんな風にたのしくお茶している時にかぎって、来客は訪れる。
そして、例にもれずドアベルが鳴った。
「いらっしゃい。え〜と?」
サラダを脇によせて、楓さんが機嫌よく対応すると、頭がバーコードになった気の良さそうなおじさんが、持っていた鳥かごをかかげる。
鳥かごの中に入っているのは、白い体躯のオウムだ。
「あのぉ、このお店で動物を引き取ってくれるとお聞きしたんですけど」
少しオウムに顔の似ているおじさんは、困ったように頭をかいた。
「え? うちは動物病院兼ペットサロンでして。引き取って欲しいっていう願いは聞き入れることはできないのですが、そのオウムのことですよね?」
はい、とおじさんは素直に頷く。
「とにかくそこにおかけください。どうしました? オウムの寿命は最長六十年前後ですが、飼う前に考えたことがありませんか?」
「はい、あの。実はこのオウムは父が飼っていたものでして。なんでも懸賞で当たったとかで、否応なく」
なるほど、と楓さんが相づちを打つ。
「その父が先日亡くなりましてね。遺品のひとつがこのオウムなんですけど。名前もわからなければ、なにを食べるのかもわからない。いったいどうして生き物を懸賞にかけたのか疑問もありますしで、よかったら専門家に預けたいなと来たのですが」
「それは失礼。突然叱りつけるようなことを言ってしまって申し訳ありません」
楓さんとおじさんはほぼ同時に頭を下げた。
「あの、失礼ですが、お父様がオウムを飼っていたことはご存じでしたか?」
「ああ、はい。懸賞好きの父でしたが、このオウムを引き当ててから懸賞に応募するのを辞めていたのですよ。わたしの方も、今回遺品として引き渡されて初めて調べましてね。えらく長生きだと知って途方に暮れているんですよ」
それはまた、と今度は楓さんが困る番だった。
「困ったな。どうしたものか。動物愛護センターに連絡するか、シェルターの方がいいのか。それとも、う〜ん」
この場のみんなで頭を抱えることしかできなかった。
つづく




