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4ー4

 渡辺さんは、わかったよと言って帰って行った。渡辺さんに買ってもらった獣医として必要な道具はそのままうちで使ってもいいことになった。それが手切れ金代わりでいいと囁いた椿さんが、やけに清々しく見えた。


「あ〜、つっかれた。男は面倒くさいな。こっちの都合も考えないで、いきなりより戻そうとしたりして」


 女のこと全然わかってないよねって涙も出さずにけらけらと笑った。


「それで? あんたたちの恋愛事情はどうなってるの?」

「「秘密です」」


 楓さんとふたり、ハモってしまってまた笑った。


「とにかく。これであたしも帰る場所がここしかなくなっちゃったってわけで、これからもよろしく」

「あ〜? 少しばかり早まったかもしれない」


 楓さんは苦笑いを浮かべる。ともかく最近の椿さんはお酒断ちがつづいているため、その分椿さんが作るご飯は豪勢で、これからもおいしいご飯が食べられると思うとうれしい半面、よろこんでいいものかどうか迷う。


 人には色々な事情があるけれど。


 椿さんの濃ゆい人生の断片を、こんなタイミングで見ることになってしまってなんだか悪いな。


 最初は悪い人に見えた渡辺さんだけど、本当はすごくやさしい人だったし。


 それでも気持ちが切れてしまったら、つづかないってことなんだ。


 少しだけ大人になったような気がする中、やけに大人しすぎるカブラくんに目をやると。


「あ〜!! あたしたちのメロンパン、カブラくんが食べてる!?」

「こらぁ!! ダメだぞ男の子!!」


 すましてるけど、マカロンちゃんもメロンパンを食べてしまっているから、残ったメロンパンはひとつだけ。


 今日のおやつだってたのしみにしてたのにぃっ!!


「う〜ん、ま、いっか。たまには。でも、盗み食いは危険をともなうからもう二度とやっちゃダメだよ、カブラくんっ!!」


 めっ、と楓さんに叱られて、しゅんとする姿を見せた。


 ともかくも。きょうのおやつはどうしよう? なんて考えているけれど。


「本谷さん、犯人は引きこもりの少年じゃなかったんだってがっかりしてたけど、それはそれで問題ありそうだよね」


 残ったメロンパンを三等分して、もぐもぐと食べながら、本谷さんと引きこもりの少年、そしておばあさんにボーガンをあげた犯人について思いをはせる。


 どうしたものか。人の心の闇に動物がまきこまれるのはとても悔しいし、心苦しい。


 動物は喋れない。だからこそ、人間が、守ってあげなくちゃいけない存在なのに。


「犯人が見つかったところで、証拠はないだろうしね」


 そう、肝心のボーガンを撃った女性は亡くなっている。だからこそ、新犯人にたどり着くのは難しそうだ。


 だけど。できることなら探し出したい。本谷さんとルビーちゃんにあやまって欲しい。簡単にボーガンを渡した理由も知りたいし、知ったからといって気持ちがやわらぐわけではないのだけど、それでも悲しいことに代わりはないのだから。


     つづく

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