3ー7
「ぼくの部屋は片付けちゃってもいいよ。せっかくだから、椿にあげる」
「お? 生意気にわたしのことを呼び捨てにするのか?」
柳くんは顔を真っ赤にして椿さんに反論する。
「っるせぇよ。あんたがぼくを呼び捨てにするから、ぼくが呼び捨てしたっていいだろう?」
「いいけど。わたし、年下を恋人にするつもりないから。そしてそれは犯罪に近いしな」
「そんなんじゃねぇからっ。くっそ。椿のやつ、なに言っても言い返してきやがる」
「じゃあ、わたしが? 柳の初恋の相手か。なるほど、なるほど? 悪くないな」
椿さんはにやにやしながらコーヒーを飲んだ。
「だから、そうじゃないって言ってるだろうっ」
「はいはい、わかった、わかった」
ふふっ。柳くんなかなか可愛いところがあるじゃない。それにしても、中学生の初恋の相手が椿さんかぁ。刺激強めな初恋だね。
「今度さ」
と、楓さんが切り出した。
「みんなで一緒にシロのお墓参りに行こうよ」
「うん、行こう」
今度はやたら素直になった柳くんを、みんなが珍しそうに眺める。
「それとボタンなんだけど。ここで預かってもらってもいい? 母さんがネズミは嫌いだって、しつこいんだ」
「あらやだ。わたしとしたことが、マザコン坊やに好かれるなんて」
椿さんがおどけて言うからまたみんなで笑った。
「いいよ。そのかわり、毎日顔を見せること。柳が来ないうちにボタンが死んでても連絡しないからね」
「わかってるよ」
顔を赤くして怒った調子の柳くんが、ハムスターのゲージにボタンを移す。
目の下にはふわふわ毛並みのマカロンちゃんと、個性的な顔立ちのカブラくん。うん、なんだかだんだんペットサロンみたいになってきた。
「ちわ〜」
そこへ、いさぎよくドアを開けて入って来たのはいさおおじさん。片手にポンタくんを抱えている。
「ああ、いさおおじさん、どうした?」
「ポンタをたすけてくれたお礼に、草刈りしてやろうと思って。ついでに外観整えたいんだけど、いいかな?」
「それ、ただでやってくれるの?」
「もちろんだよ」
「やった!! よろしくお願いします」
それから、カブラくんたちとお散歩したり、草刈りをてつだったりして、少しずつ一日が過ぎてゆく。
こんなに緩い日々がつづいてもいいのかなと思ったけど、なんだかとてもくすぐったい。
「よし、完成っ」
草刈りが終わり、ペンキを塗り替えて外観を整えたいさおおじさんは、満足そうな声を上げた。うん、なかなかにスタイリッシュな外観に変身したぞ。
こんなに可愛いお店だったら、お客さん増えそう、なんてわくわくしていたら。
「あれ? 本谷さんだ」
なにげなく楓さんが言うからみんなで見たら、瀕死の猫さんを抱えるおばさまの姿が見られた。
「酷い。ボーガンだ」
椿さんの声に、心が冷えてゆくのだった。
つづく




