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3ー5

 家に帰るのは嫌だ、というその一言で、柳くんはサロンにお泊りすることになった。ご両親には椿さんが説明して納得してもらったらしい。


 楓さんの熱は、夜になる前に下がったけれど、水分を摂るだけが精一杯で、お粥すら口にすることができないでいる。


「いつもこんなになるの? 姉さん」


 ふ〜ふ〜と洗呼吸を繰り返す楓さんを見てすぐ、柳くんは部屋を出た。


 あたしと椿さん、それに柳くんは晩御飯にとお粥を利用した雑炊を作って食べる。


「あんたの部屋、まだそのままなんだよ。一部屋空けば、あたしの部屋になるんだけど。ああ、ちなみに楓がここまで衰弱したのは久しぶり。ちょうど、シロが大往生したって聞かされた可能性があるよ」


 あ、昼の電話。でも、椿さんは電話のこと知らされてないはずなのに、どうして?


「ウソだ。シロが死ぬわけがない。だって、ぼくの大切な猫なんだからっ」

「聞き分けのない坊やだこと。命あるもの、必ず別れがあるんだよ。そのハムスターだって、二年の寿命しかないから楓に泣きつきに来たんでしょう? どうすれば長生きするのかって」


 ちなみに、シロのあたらしい飼い主は椿さんの親友だったという。なので、椿さんの方が先にシロの死を知っていたことになる。


 それにしてもこのタイミングは最悪コンボなのではないだろうか?


 楓さん、薬に頼りたくないって言うけど、それなら病院に行った方がいいかもしれない。


 ところが楓さんは柳くんの件ですっかり病院嫌いになってしまった。そういうものかな?


「シロにお礼言いなよ? 長生きしてくれてありがとうって」

「もうシロは死んだんだから、お礼なんか言っても意味ないよ」


 椿さんと柳くんのやり取りはつづく。


「死んだってあんたのことぐらい心配してくれてるわさ。動物ってそういうところあるんだから。獣医師の言うことを信じないの?」

「ふん。肩書だけのクセに」

「ざぁ〜んねんだね。今日からこの店の一部を改装して、ペットサロン件動物病院にすることにしたので、わたしもここで働くんですぅ〜」


 ふん、くそうと柳くんは綺麗な顔を歪めて毒づくけど。


「と、いうことなので柳坊や、店の改装手伝いなさいよ」

「なんでぼくがっ!?」

「泣かないからだよっ!!」


 ふいに強い言葉で椿さんが怒鳴った。


「あんたたち姉弟って本当に面倒くさい。楓は思いつめて発熱するし、弟は弟で口先だけでゴネてるし。そういう時は体動かすのが一番なのっ。まったく、世話が焼けるわ」


 そうだったんだ? それで楓さん、熱が出たんだ。あの電話の後、様子がおかしかったのも、気持ちを押さえつけていたからだったんだ。


 それってやっぱり、さみしいな。そういう時に、あたしたちと一緒に泣ける場所になりたい。そうじゃなきゃ、感情がもったいないよ。


     つづく

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