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突然のイケメンに目のやり場が困る。
「ああ。あたし、一応女だし。ナンパとかじゃないんだけど。体面とかそういうのを気にするタイプ?」
え? 女の人? その割に目がキリッとしていてかっこいい。って、ショートカットで海からあがったばかりだから、あたしが勘違いしちゃったんだ。
「ごめんなさい。あたしが勘違いしてました。カブラくんと一緒でもいいんですか?」
「いいよ。なんなら休んで行ってもいいし」
あたし、浜風 楓、とイケてる女性は名乗ってくれた。
あれ? 浜風って?
とにかく車から外に出たい一心なのに、カブラくんがリードをつけさせてくれない。あたしは名乗れないまま、カブラくんにもて遊ばれた。
「いいよ、ドア開けちゃって。ちゃんと受け止めるから」
うっかり鍵をかけてなかったサイドドアは楓さんに開けられちゃって、案の定カブラくんが車の外に飛び出してしまう。
「ちょっ、カブラくんってば!!」
「おっと。はいキャッチ。きみはなかなかやんちゃだね。さすがはフレンチブルドッグ。リード貸して」
楓さんにキャッチされたカブラくんは急に大人しくなって、リードをつけてもらう。
「カブラくん、指輪飲んじゃったんだよね? しばらくうちにいても平気かな?」
なぜか慣れた手つきでカブラくんを着地させると、あわあわと砂をかくカブラくんを前へ進ませた。
「よしっと。きみもおいでよ?」
きみ、と呼ばれて差し出された右手にドキッとする。ショートカットがやたら似合う楓さんは、あたしまでリードしてくれている。
「は、はい。あの。あたし松下 里奈です。その子はカブラくん。よろしくお願いします」
せっかく名乗ったのに、最期砂地に足を取られてずっこけた。
「ごめんごめん。転んじゃったか」
ちょうどのタイミングでカブラくんが暴れたため、楓さんが目を離した瞬間の、残念なあたしでした。
「それじゃ、こちらにどうぞ。里奈ちゃん」
改めて手を取ってくれた楓さんは、砂まみれのあたしを嫌な顔せずにたすけ起してくれた。
「ありがとうございます」
まさか、この出会いが今後のあたしとカブラくんの運命を決めてしまうなんて夢にも思ってなかった。
つづく




