3ー2
海辺のレストランかぁ。きっとすごくお洒落なお店だったんだろうな。
「ご両親共、それ以来楓に厳しくあたってさ。シロを拾ってきたのが楓だったんだよね。だからかな? 楓は他人を頼るのが苦手だし、お金を請求するのも苦手。あたしみたいなのがこの店にいないと、店ごと銀行に取られかねないんだ」
そうじゃない、とあたしは思った。お金の話や、楓さんの性格のことを聞いても、今は少しも楽しくない。
「保健所に行ったシロだけど。なんとかあたらしい飼い主が見つかったものの、以来楓は猫が苦手になっちゃったんだ。楓の顔なんて、もろ猫系なんだけどね」
そういうデリケートなところがあるんだよ、あの子にも。
椿さんはそう言って、からからと笑った。
「じゃあ、二階のあの部屋は柳くんの?」
「そう。柳くんとシロの部屋だった。結果はともかく、シロがなついたのは柳くんの方だったからね。皮肉なものよ」
柳くんは、命はたすかったけれど、シロを許さなかったという。猫なんて嫌いだと聞いたのが、別離する時の言葉だったから。
それを聞いて、あたしは涙が出てきた。
「泣かないでよ、里奈ちゃん。あたしが泣かせたのがばれたら、また楓に文句言われるじゃん」
「あたし、あたし、なにも知らなくて」
「誰もその話を振らないからね。ところで、里奈ちゃんはこの店のホームページを作ってくれるんだって?」
あ、わすれてた。そんな話をしていたのだ。
「パソコンさえあれば、ちゃちゃっと作れるんですけど」
「まずは片付けなくちゃね。里奈ちゃん、手伝ってくれる?」
「はいっ。あたしにできることなら、なんでもやります!!」
「おお、頼もしいね。楓は運がいいよ。里奈ちゃんに会えたんだからね」
もちろん、わたしと会えたのも運のひとつだけどね。なんてちゃっかり言い置いて。
気合を入れて腕まくりをした椿さんのお腹がぐうと鳴った。
「あちゃ。かっこ悪い。かっこいいのは楓が全部引き受けちゃうからな」
そうして、人には様々な理由があって生きているのだと知る。
動物はもちろん、人間とのふれあいもできるだけ避けてきたあたしだから、こんな時、ご飯を作るくらいのことしかできない。
「簡単なお昼ご飯を作りますね」
「本当に楓はいいお嫁さんを手に入れたわ。むしろもうあんたたち結婚しな」
「それはさすがにお断りします」
あははははっと笑っていたら、突然ざーっと雨が降ってきた。
楓さん、大丈夫かな?
つづく




