2ー6
それから一週間後。歌子さんが亡くなったことを娘さんから聞かされた。
娘さんは、歌子さんの心臓が悪いことを知っていたのにマカロンちゃんを預けたことを深く後悔していた。
けれど、大型犬なため、あたらしい飼い主を探すことは難しかったのだと、泣きながら話してくれた。
アレルギーは今も酷く、とてもマカロンちゃんと暮らすことはできないため、よろしくお願いしますと頭を下げられた。
仕方ないよね、と楓さんは糸が切れたように空虚な笑顔を浮かべてささやいた。
「まさか妊娠を期にアレルギーが出るなんて知らなかったんだし、ゴールデンレトリバーじゃなければ、あたらしい飼い主がいたかもしれなかったけど。だけどやっぱり思うんだ。人間って、自分勝手だなって」
それは、娘さんに対しての言葉ではなかったにしろ、辛辣ではあった。
「あたしも、自分勝手だって楓さんに言われた時はどきっとしました。楓さんは、動物の幸せを心から願っているのですね」
「そうでもないよ。獣医師なんて。ああ、ちなみにトリマーの資格も持ってるんだけど、どうも取り立てと片付けが苦手でね。今月も赤字なんだ」
だったらホームページを作って宣伝してみませんか、と言ったら、楓さんは、そういうのも苦手なんだよね、と頭をかいた。
「ならあたしがやります!! 料金に関しては椿さんに相談しながらやることにして。まずはホームページを作って宣伝しましょう!!」
「おお!! 里奈ちゃんすごい」
落ち込んだ表情を浮かべていた楓さんが、ようやくいつもの笑顔に戻る。
うん、あたし楓さんのこの笑顔が大好き。
……なんてなごんでいたところで、急にドアをノックする音が聞こえた。
ちなみにこのサロンにはインターフォンなんて洒落たものはない。あってドアベルだけだ。
「あ、は〜い! 開いてますよ」
楓さんがドアを開けると、引っ越し業者さんが姿をあらわした。
「こんにちは〜。引っ越し業者です。浜風ペットサロンはこちらでしょうか?」
「はい、そうですけど。え? あたし、引っ越しなんて頼んでませんよ?」
「わたしの荷物よ」
すでに荷物を持って立っている業者さんを押しやって椿さんが入って来た。
「え? なに? どうしたの?」
「恋人が他の女のところに行ったから、マンション出た。しばらくここに住ませてくれない?」
お願い、というよりは、一方的すぎるのではないでしょうか?
なんて混乱してるのもつかの間。すぐに電話が鳴って楓さんが家電に出る。
「もしもし? はい。ああ、いつもありがとうございます。えっ? ……そうですか。それはわざわざありがとうございました。後ほどお伺いさせてください。では、失礼します」
受話器を置いた楓さんの表情は一気に暗いものになった。なんの電話だったんだろう? それに、この荷物はなにっ!?
つづく
※申し訳ありません。2ー6が抜けていました。以後きをつけます!!




