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2ー5

 なんとなくみんなの気持ちが沈み始めてしまった頃、歌子さんから長い長いメールが届いた。


[この度は命を助けてくれただけでなく、勝手なお願いまで聞き届けてくださり、どうもありがとうございました。マカロンちゃんは一人娘が結婚してまもなく飼い始めた犬でした。ところが、妊娠を期にアレルギーが出てしまい、マカロンちゃんを飼うことができず、わたしが引き受けることになりました。夫にもすごくなついてくれていたのですが、先立たれ、わたしでは手に負えない状態になってしまいました。楓さんにここまで親切にしていただいて、これはもう運命とばかり、終活を考える機会となりました。その時、マカロンちゃんだけは幸せであって欲しい。その望みだけです。楓さん、どうかマカロンちゃんのことをよろしく頼みます。わたしがしてあげられなかったあれこれを、あの子にしてあげてください。勝手ばかりで申し訳ございませんが、どうかよろしくお願いいたします]


 メールを読み終えると、楓さんはふぅ、と息を吐き出した。


「ワンちゃんのアレルギーか。こればかりは仕方ないよね。娘さんも、まさかアレルギーが出るとは思わなかったのだろうし、なんてゆうかそういうのってせつないよね」

「はい」


 あたしも、せつない気持ちになった。


「室内でワンちゃんを飼うことで、その子がアレルギーになることはあるんだけど、その逆とはね」


 きっと、娘さんも泣く泣くマカロンちゃんを手放したのだろう。


「どうするんですか? 楓さん」

「ん? うちで飼うよ。このうち、ボロ家だけど、里奈ちゃんが片付けてくれたおかげで広くなったしさ、カブラくんの犬見知りもよくなるといいなって思うし。なにより、マカロンちゃんは頭がいい。だからきっと、カブラくんのいいお姉さんになるはずだよ」


 カブラくんと言えば。まだマカロンちゃんが怖いのか、距離を取ってみたり、あたしの足元に隠れてみたりしている。


 一方のマカロンちゃんも、歌子さんのことが心配なのか、じっとすくたまっていて動かない。


「なんていうのかな。さみしいよね、こういうの。もっとこう……」


 言いかけた楓さんの目からは、大粒の涙がぼとぼと流れ落ちた。


「あ〜、もうっ」


 そう言いながら、ティッシュで涙を拭う。だけどすぐにあたらしい涙があふれてくるのだった。


「犬を飼うことに、正解なんてないんだよね」


 その一言が心にずばっと突き刺さって、あたしはカブラくんを見下ろしたのだった。


     つづく

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