2ー1
翌日、点滴で元気になったポンタくんは、いさおおじさんに連れられて帰って行った。
その際、椿さんに教わった通りの金額を提示したら、おじさんは喜んで払ってくれた。
「いやぁ〜。楓先生はいつもお金取らないから心配でさぁ。いい助手が付いたね」
そんな風に言われたから、恥ずかしくてくすぐったかった。
そして……。
「さぁ〜て、里奈ちゃん。カブラくんにリード付けて。一緒にお散歩の練習するよ」
「練習って、どんなことをするのですか?」
「うん? 連れて歩く練習しておかないと、ドッグランに行っても迷惑がられるし、呼んだら来ない場合は最悪の場合、事故に遭う可能性も高いよ?」
そうだぁ〜。カブラくん、やんちゃすぎて心配がいっぱいだよ。
たしかに可能性の話をしたらきりがない。ここは素直に楓さんにしたがおう。
とは言え。
「ちょっと、カブラくん、首輪付けるからじっとして!! あ、こら!!」
カブラくんは遊んでいるとでも思ったのか、あたしが近寄ると逃げるのを繰り返す。
「それじゃダメかなぁ? カブラくん。チコウヨレ」
楓さんは背すじをピッと伸ばすと、おもむろにおやつをひとかけら手にしてカブラくんを呼んだ。
案の定、おやつに釣られたカブラくんは、首輪と胴輪、それにリードまでを悠々と付けられた。
「それ、ズルくないですか?」
あたしが言うと。
「でも、カブラくんはまだ、お散歩の楽しさを知らないでしょう? だから、首輪を付けたら楽しいことが起きるってクセ付けするのがいいんじゃないかな?」
それも一理ある。
そしてこれは想像でしかないけど、あたしはまだカブラくんに飼い主だと認められていない。だとしたら、使える手段は使った方がいいのかもしれない。
「降参です。楓さんの勝ちでいいです」
「よしよし。素直に認めることも大事。里奈ちゃんはリード持って歩く練習しよっか?」
「はい」
とは言ってもカブラくんは真っ直ぐ歩くどころか、時々自分の尻尾とじゃれたりしてなかなか前に進まない。
「里奈ちゃん、リードを短めに持ってみなよ?」
「あ、はい。こうですか?」
「そうそう」
あたしがリードを短くすると、カブラくんは急になにかに気づいたようにあたしの顔を見た。
「そう。カブラくんの命綱は里奈ちゃんの手の中にしかない。そのことをきちんと教えてあげないとね。さぁ、外に出てみようか?」
うわぁ、いよいよお散歩だよ。この四日の間では、まともにお散歩してこなかったから不安でいっぱいだ。
つづく




