1ー10
ぶどうジュースを飲んでご機嫌になった椿さんはまた来るからと言って帰って行った。まるで台風の目みたいな方だなと思った。
「せっかくだから、誤飲について教えておくよ」
ふいに楓さんが先生のように眼鏡をかけた。
眼鏡姿も超絶美形!!
「まず、誤飲しそうな物は彼らの近くに置かないこと。特にやんちゃな子はなんにでも興味を持つからね。強力磁石だって、飲み込めば腸を破る可能性がある。そのことをわすれないでいて欲しいんだ」
「はい!!」
勢い込んで返事をしたものの、楓さんは笑顔でよし、と言ってくれた。
「指輪やイヤリングなんかも、ご主人様が大切に扱っているのがわかるから、やきもちを焼いたり、興味を持ったりして誤飲することがあるんだよ」
なるほど。それでカブラくんは形見の指輪に興味を持ったんだ。
と、すると。あたしの責任だよね? これからは気をつけなくちゃ。指輪はネックレスにつないで取れないようにしよう。
「大切な物をより大切に扱えばこそ、その物の価値がわかるってもんだよね。うん。ちなみに――」
楓さんは、ポンタくんに目をやると安心したように息を吐いた。
「殺鼠剤を飲んだらたすからない可能性が高いから、より扱いに気をつけなくてはいけないんだ。椿姉さんがたすけられる命が少ないって言ったのは、最後の手段として呼ぶからなんだ。あの人は、あたしなんかよりずっとたくさんかなしい思いをしているから」
だからさ、と楓さんがつづけた。
「ふだんはなるべく笑っていなくちゃ、ね? だって、この子たちの寿命はおどろくほどあっという間だから。なるべくいい思い出を作ってあげたいじゃない?」
うん、その通りだ。あたし、一時の誘惑に負けてカブラくんを飼ってしまったけど、なんの覚悟もしてなかった。
しかも、カブラくんのやんちゃぶりに困って、どこかでカブラくんを引き取ってもらいたいなんて自分勝手なわがままを言い出してしまっていた。
これじゃあ、楓さんに嫌われてあたりまえなのに、楓さんはチャンスをくれただけじゃなく、一緒に暮らそうとまで言ってくれた。
なんてあたたかくてやさしい人なんだろう。
外見の美しさだけじゃなく、心まで美しいんだもんな。
「あとは、できるだけ人間の食べ物をあたえない方がいいよってことなんだけど、なんでかわかる?」
あ! あたし、それは勉強しました。
「ものによっては毒物になるから、ですか?」
「ご名答!」
極上の笑顔までもらえて、しあわせ〜。
つづく




