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1ー1

 無理だ。大ピンチだよ。


「がるるるるるぅ〜」

「痛いからっ。もう髪の毛噛まないでっ」


 車中泊のストレスからか、カブラくんの犬歯があたしの髪を喰む。


「食べられないって。それはあたしの髪の毛!」


 もう、泣きそう。


 事の発端はカブラくん。うっかり癒やしを求めたばかりに、ペットショップで一目ぼれしたのが生後六カ月のフレンチブルドッグのカブラくん。


 そして、あれやこれやと買い込むうちに、アパートがペット禁止だということに気がついたのは昨日の話。


「こんな狭いアパートで犬を飼うなんて。すぐに出て行ってくださいっ!!」


 誰かのタレコミで大家さんに強制退去命令を出されたのが昨日の夕方。


 そして、なぜか連鎖的に仕事を首になり現在に至る。


 なぜだか海の見える場所で車中泊をしようと試みたものの、眠れるはずもなく。それはカブラくんもおなじことだった。


「ねぇ、カブラくん。あたしたちどうなっちゃうのかなぁ? ねぇってば」


 のんきに海を眺めていたら、飽きっぽいのかストレスなのか、あたしの髪をかじり始めたカブラくんと意思疎通が取れず断念。


 ネットの情報によると、この近くにペットショップがあるらしい。


 まだ出会って三日しか経ってないから、今のうちにペットショップで引き取ってもらおうとしたけどそれは失敗。


 しかたなくスマホでペットショップを探してみたけど、この辺り、ということしかわからず、目印もない。


 なんか、変な小屋はあるんだけど、人っ子一人いないのだ。


「ああもう、お腹すいたよう!!」


 その時、コンコン、と窓を叩く音が響いた。げ。めっちゃイケメンのサーファーに車の中のぞき込まれてる。


「どうかした? その子、すごくお腹が空いてそうだけど?」


 ぐぅ〜っと、あたしのお腹が鳴る。


「きみもか。なら、一緒に朝ごはん食べない? すぐ近くにうちがあるんだけど」


 嫌だい。いくら黒髪のイケメンだからって、サーファー相手に遊んでもらうわけにはいかないもん。


「ごめんなさい。車、出しますから」

「あっ!!」


 その拍子に、カブラくんがあたしの手からなにかをむしり取った。ちょっと待て!!


「それはお母さんの形見の指輪っ!!」


 気づいた時には遅かった。


 あたしが慌てて言ったところで、カブラくんが聞き入れてくれる様子もなく。あわれ、形見の指輪はカブラくんにのみ込まれてしまったのだった。

 

     つづく

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