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【みんなの夏休み:第19話:島にも不穏な空気が】

昨夜の不穏さのまま翌日の朝は荒れ模様となっていた。

島に遊びに来て海に出れないと予定は随分違ったものになる。

いつもなら日光がさんさんと降り注ぐ時間になっても、分厚い雲がその恵みを遮り明るさを奪われていた。

ひゅるると不気味な風斬りの音が不安を煽っていく。

少しづつ明るくなるはずの時間が巻き戻るように、空は時間とともに暗くなっていった。

「残念ですが、嵐が来るようです。波高を見てきましたが、出港は難しいです」

桟橋に船を確認に行ったエーラが、みなに残念そうに告げる。

皆で寝坊組をにやにや眺めながら朝ご飯を食べたところだ。

セレナとフィオナが既に置きて、真っ赤になってシャワールームに消えていった。

着替えも持っていったので、朝支度だけであろう。

さすがに起きたときの姿を皆に見られたのは恥ずかしかったらしい。

ちなみにユアとカーニャはまだむにゃむにゃと抱っこ状態で放置されている。

部屋が明るくなれば起きるのであろうが、薄暗いままなのでそっとしておけばまだしばらく鑑賞できそうであった。

ラウマとノアがそっと音を立てないよう気配を消して昨夜の酒宴の片付けをしていた。

ノアはユアのほっぺを突きたい衝動を押さえるのに苦労していた。

そうしてすることが無くなり、セレナとフィオナも着替えて復活したころカーニャが目覚めた。

「あ‥‥しまった」

ユアの腕の中で目覚め、幸せそうな顔で頬を押し付けたところで視線に気付いたのだ。

「ふむふむ、これは初めての表情ではないですね。慣れた朝という感じです」

これは少し興奮したレテシィア。

「夢女子と言うやつですかね?」

と冷静なエーラ。

「姉さま幸せそうでミーナも嬉しいです」

これはレティシアに寄り添い、少し方向性の違うミーナ。

「やだぁ!!趣味悪いわよ!みなで見てるなんて!ちょっとユア起きてよ」

「ふみゃあ」

カーニャが起きようとするのだが、いまだ目覚めぬユアがしっかりホールドして逃げられない。

フィジカルではユアが上なのだった。

そうしてユアが抑え込み、カーニャが暴れるのでカーニャもユアも夜着が乱れまくり、いろいろまずい状態になるのであった。

レティシアとミーナが両手で顔を隠し真っ赤になるのだが、指の隙間からしっかり見ていた。

最後は零距離からカーニャの張り手が炸裂し、ユアも目覚めた。

最初はぺちぺち叩いたのだが、なぜかちゅーっとしようとするので、真っ赤になったカーニャにバシンとやられるのであった。

レティシア達の黄色い悲鳴も目覚ましになったようだ。




そうして年長組がそろう頃には、すっかりくろぐろと雲に覆われ薄暗く、風も力をましてロッジを揺すりきしみを上げた。

風の音ときしみが重なり、軽い悲鳴も上がる。

「ええと、これ大丈夫なのかな?エーラ」

心配になってきたユアがたずねる。

「建物はいままで壊れたと聞いたことがないので、大丈夫と思いますが‥‥船のほうが心配です」

とエーラは悲しそう。

本来はここまで波高が上る前に沖に出てしまえば、むしろ安心だったのだが少し判断が遅かったのだ。

今となっては動かせない。

「うす暗くなったので、照明のまほうでもつかいますか?」

とはちょいちょいとユアの服をつまんでたずねるアミュア。

反対側にはカーニャが不安そうにつまんでいる。

部屋の照明はついているのだが、雰囲気重視のあまり明るくないランプ風の魔石灯なので明るくならない。

外が真っ暗だと明るく見えたのに、少し明るいとむしろ暗く見えるのだ。

「イヤむしろ好都合なのでわ?」

不穏な顔で不穏なことをいいだすエーラ。

ソファセットの一つにみなであつまり話していたのだが、角に置いてあった魔石灯を手持ちで持ってきて真ん中に置いた。

そうして床に置き車座になると、全員の顔に下から光があたり不気味に見えるのであった。

ソファにすわっているカーニャが、ぎゅっとユアに密着して「ひぃ」と悲鳴をこらえた。

暗い屋外を背景に、窓にも不気味な顔が並んで写っていたのだ。

「これは小さい頃に船員の一人からきいた話なんですが‥‥」

「いやぁ!」

おどろおどろしいエーラの語りだしに、まだなにも怖いことは言っていないのにカーニャが反応する。

ユアとソファの背もたれの間に潜り込もうとするカーニャ。

不審そうな皆にユアが説明する。

「カーニャは怖いの苦手なのよ」

ミーナも肯定する。

「そうでした、姉さまはおばけが嫌いなんです」

不思議そうに、英雄とも言われるカーニャの怯え姿を鑑賞する皆であった。

くっくっく、とエーラはむしろご褒美ですと言った顔で続きを話すのであった。

「今日のような風の強い日に‥‥」

カーニャは既に両手で耳をふさぎユアの太ももに顔を埋めていた。

よしよしと頭を撫でるユアがママ味を発揮する。




そうして時々悲鳴をあげながら怪談をつぎつぎ披露しあうのであった。

ユアの隣で、こちらは怖いのではないが都合がよいと腕を抱き密着するアミュアだったが、ふと大きな物音に気づく。

ガタンと建物の裏側で音がして反応した。

マーモットのようにぴょこりと立ち上がり気配のしたほうを見る。

鍛えられたアミュアの反応はすでにディテクトイビルを無詠唱で発動していた。

ピンと魔力が広がった。

「‥‥気配なし」

短く報告するまで緊張していた皆が息をもらす。

「もぅ演出なら怖すぎるよアミュア‥」

とミーナもちょっと怖かったのか、アミュアの隣に来てくっつく。

いまだ緊張をとかないアミュアが見回していると、まどから見える庭をすうと影が横切るのが見えた。

さっきの魔法で、皆を驚かせてしまったアミュアは、一瞬迷ったが風で何か飛んだのを見間違えたかもと座り直すのだった。

屋外の風はいよいよ強くなり、雨が強くなりばらばらと大粒の音がしだす。

嵐がくるのだった。

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