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わたしの外伝あつめ  作者: Dizzy
第1章
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【ミーナ学園編:第8話:二人の決意】

今日は一年生の週に2回ある実技の日であった。

実技は準備が大変で、施設も利用するため一年生はまとめて行うのであった。

魔法実技室と看板のある大きな講堂は、座席も多く100名近く座れるようになっていた。

正面は魔導強化ガラスで仕切られ、少し低くなった実技試験場が見下ろせる。

音声も魔導スピーカーとマイクを通したものと成る。

同室2名毎に試験場に入るのだが、今は学年で1人だけの個室利用者、すなわとレティシアが実演していた。

実技試験にも使われる、攻撃魔法の評価装置がガラスの向こうにある。

上級魔法にも耐えられる特注品で、現存すると言われるほとんどの魔法を評価可能であった。

見た目は普通の的であった。

「でははじめなさい」

スピーカーを通した教師の指示で、レティシアが詠唱を始める。

水色の魔力が吹き上がり、レティシイアの体が少し浮き上がった。

式構成からみても水魔法の上級であろう。

「おい、上級魔法じゃないか?あれ」

「すごい魔力でうきあがっているぞ!」

などと男子生徒を中心に声が上がる。

先生に私語は慎むように、と注意を受けていた。

「オウンディーヌスマッシュ!!」

レティシアの詠唱が終わり、実技講義の決まり事で魔法名を宣言する。

レティシアの胴回りほどある太い水流が、滝のように水平に的に向かった。

ズドオォォ!!

まさに滝のような音も立てて壁一面に魔法が当たる。

跳ね返った水は魔力に分解され、周辺に配置された装置が吸い上げる。

威力を下げてしまうが安全対策であった。

やがて数瞬で魔法の効果が切れ、講堂の上と、的の上にあるカウンターが評価威力を表示する。

これは試験のときにも採点として採用される確かな威力数値となる。

「20100!!!」

「すげえ2万こえるとかあるんだな!?」

「伝説のカーニャさんなみじゃないか?」

「いえカーニャさまは水は不得意で2万とききました」

などと先生の注意そこのけでわいわい騒ぐ生徒達。

ミーナも興奮してエーラに話しかける。

「すごかったね!エーラ、浮き上がってましたよ」

「そうね‥すごいとおもうわ」

エーラの反応は最近いつもこの感じだ。

元気がないのは理由があって、話してこないのは相談しにくいことなのだろうと、放置していたミーナ。

ついに気になって尋ねてしまう。

「ごめんね嫌だったら答えなくてもいいのだけど。なにかあったの?エーラ元気がなさすぎます」

心配そうに覗き込んでくるミーナに作り笑いとわかる笑顔で答える。

「ちがうの、気にしないでちょっと魔法のことで悩んでいるの。授業に集中しないとね」

と、明らかにごまかす態度であった。

視線を感じて、実技室の入口辺りをみると、鋭い目つきでこちらを見ている侍女二人が居たのだった。

(あの人達がなにかエーラに言ったんだわ。泣かせるようなことを)

じわり

ミーナが感じたことのない力がお腹の下の方で沸き起こる。

それはじんわりした光になるほどの魔力となって漏洩した。

ミーナの全身を縁取るようにじんわりと湧いた魔力は朱色。

カーニャと同じ火属性の魔力であった。

すぐに自分で気づいて、先生に気づかれず収めることができた。

授業中に指示なく魔法は使ってはいけないと定められていた。

(びっくりした。勝手にでてくるものなの?魔力って)

レティシアの魔法が話題となり、騒然としていたので、講堂内でこのミーナの変化に気づいたのは3人だけであった。

監視するように見ていた侍女二人と、直ぐ隣で見ていたエーラだけだった。

侍女達は挑発されたと思い込み。

エーラは理由が思いつかないが、ミーナが怒ったことは解った。


レティシア騒ぎのせいで少し遅れ気味になったが、午後一番にはミーナとエーラの組が実技する予定となった。

お昼は自由時間となったので、今日は大学の学食レストレランに行くこととした。

少し遠いが学院の生徒はあまりこない。

ミーナとエーラ二人で行こうと決めて、手を引いたミーナがずんずん進んでいったのだった。

「ちょ、ちょっとミーナそんなに引っ張ったら痛いわ」

「大丈夫です、これぐらいでは手は抜けません」

発想がアミュア化しているミーナ。

そうして急いで向かったレストランで食事となったのだった。

ビッフェで取り分けたトレイを持ち、着席するなりミーナの質問攻め。

「エーラ正直に教えて下さい。あの侍女達になにかされましたね?」

真剣に真っ直ぐ見てくるミーナの迫力に戸惑うエーラ。

「ち、ちがうの。ただ少しお願いされただけ‥‥」

「なにを言われたんですか?教えて下さいエーラ」

一歩も引かないぞという気迫を込めて聞くミーナ。

眼を泳がせ答えないエーラにさらに告げる。

「誰にも言いませんし、あの侍女にもこちらから手を出したりしませんから」

ぎゅっとエーラの手を取るミーナ。

「信じてください、私はエーラの味方ですよ」

その握られた手のぬくもり。

自分より小さな作りの手を見てエーラの眼から涙がこぼれた。

ミーナが自分よりも年下なのだと久しぶりに思い出したエーラ。

情けないのと、恥ずべきこととの気持ちが溢れてしまったのだ。

しばらくそうしてミーナの手のぬくもりを感じた後、エーラがとつとつと話しだした。

「先日ミーナが居ない時に侍女たちが来てね‥‥」

ようするに、整理すると首席のレティシアに近い成績のエーラに、少し手を抜けと脅していったのだ。

色よい返事をしないエーラに恥知らずにも、そうしなければ実家のマルタ商会にも迷惑がかかるかも知れないと臭わせた。

実家にも相談の手紙をだしたのだが、可能ならば逆らわないようにとやんわり返事が来た。

ヴァレンタイン伯とはそれくらいの名前であった。

地方の商家など、簡単に消されるほどの。

すべて聞いたミーナは逆に冷静になれた。

(姉さまの言ったとおりになりそう。これは私がしなくてはいけないことだ)

ミーナは後悔していた。

本気を出さず、影に隠れたからなめられたのだ。

田舎貴族の次女程度、言葉一つで黙らせられると馬鹿にされていたのだ。

ミーナは父母にまで侮蔑を受けたように感じ、猛省したのであった。

(いいですよ、そちらがその気ならば)

気持ちを一度鎮めるために深呼吸するミーナ。

ふぅと長く息を吐き出してから、改めてエーラの目を見る。

「そんなの許されません。私はエーラの実力を知っています」

いままでにも何度かあった実技の時間。

いつもバディとして組んだのはエーラだ。

ミーナはエーラも実力を隠していることを知っていた。

きっと自分と同じなんだと、目立ちたくないだけなのだと思っていたのだ。

ミーナの静かな怒りに触れてエーラは場違いだが嬉しくなったのであった。

自分のためにミーナが怒ってくれていると伝わったのだ。

エーラの眼にも決意の光が灯るのであった。

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