【みんなの夏休み:第11話:これで9人になりました】
翌日午後になり合流したユア達の馬車。
カーニャの常宿が合流場所になっており、ホテルのロビーでミーナ・レティシアと3人で待っていたカーニャである。
今日は昨日の反省点を踏まえ、比較的に目立たない白系統の格好で白いツバ広帽子を深く被っていた。
これでダメなら仮面がいると、本気で検討しているカーニャであった。
「おまたせ!カーニャ。ごめんね待ったかな?」
元気なユアが代表してホテルに入ってくる。
今日は外が熱いのでだいぶ薄着だ。
去年も着ていた白いホットパンツにオレンジのノースリーブだ。
上は丈が短くおへそが出ている。
足元は革のかかとがあるサンダルだ。
白いリボンの巻かれたストローハットを外し、顔をみせるとすっかり日焼けして茶色になっていた。
ユアを迎えるため立ち上がったカーニャに、二人も一緒についてくる。
「お疲れ様ユア、大変だったみたいね。天気が良くて辛かった?」
にっかり笑い白い歯をみせるユア。
「あたしは平気だったけど、アミュア達は全滅だったよ。外に出れない気温だったね」
ああと思い出して、レティシアを紹介するカーニャ。
「そうそう、この子がミーナの友達のレティシアよ。レティこの子がユア。私の友達よ」
照れずに友達だと言えるようになったカーニャであった。
自然な動作でお辞儀をして白いワンピースの裾をつまむレティシア。
サンダルも白で統一されとても愛らしい。
「はじめましてユアさま。レティシアです。どうぞレティとお呼びください」
にこと上品に笑うレティシア。
「こんにちわレティちゃん、よろしくね」
短い挨拶で手をだすユア。
あっとカーニャが思った時には、レティシアが察して握手していた。
にこにこで手を握るユアとレティシア。
高貴な女性を握手させる事が出来るのは、より高貴なものだけ。
貴族社会では握手をもとめるのは自分が格が上だと示す行為になる。
「ユア。レティシアには良いけど‥‥貴族には、特に貴族の女性には握手を求めてはだめよ」
「そうなの?ごめんね」
眉を下げるユアに、レティシアも悲しそうな顔になる。
「わたくしは気にしませんわ、ユアさま」
レティシアが手を離さずに答えた。
「まあ一般的な話よユア」
ちょっと最近貴族社会と繋がりがなかったので、いろいろ忘れているカーニャであった。
そもそもそんなルールもしらないユアであるのだが。
実はユアが絶縁されたとは言え、血筋的にはミルディス公国の辺境伯家の父と子爵家の母に生まれた娘だとは、本人すら知らない事実であった。
「うん、ありがとう教えてくれてカーニャ。レティもあたしをユアって呼んでね様ははずかしいな」
にっこり笑うユアに見たことのない魅力を感じるレティシアであった。
「そういうことならお言葉に甘えて一緒に乗せてもらおうかな?いいよね?アミュア?」
馬車から下りてホテルのロビーでぐったりしている三つ子達。
「はーい」とぐってりの塊から白い手が上がった。
大き目のソファに3人で固まって沈み込んでいた。
意外なことにノアも暑さに弱かった。
ラウマとアミュアはすぐダウンしたのだが、ノアは最初ユアの隣で頑張ったのだが、具合がわるいよと言って中に入ってからは夜まで出てこなくなった。
今はホテルのロビーに全員集まっており、大型馬車もフィオナが回してホテル前に停まっている。
それぞれ自己紹介と行きたかったのだが、三つ子達がダウンなので明日しましょうとなった。
4人部屋を取り、カーニャとユアが手伝って三つ子を運んだのだった。
ホテルは空調がしっかり効いていて、快適な温度だったが、旅中のダメージが大きく今日は寝せることになった。
さっそく宴に招待するレティシアだったが、ちょっと大人の話があるから今度ねと、カーニャがインターセプトしてユアを連れ去った。
ミーナは今夜も宴に行くようだ。
ユアを誘って外にでたカーニャは、行きつけのレストランに連れていくのだった。
外壁と内壁の間にある、洒落た小さなレストランで、カーニャの行きつけだ。
奥まったボックスを取って二人で収まった。
「危なかったわ‥‥レティは少し危険なのよ」
真剣なカーニャを見ておどろくユア。
「そうなの?普通の可愛い子だったけど」
「その可愛いがあぶないのよ‥‥」
そういって昨夜の宴の恐ろしさを延々と語るカーニャ。
その勢いで飲み物が来るまで話し続けたのだった。
「ここは王都では珍しいミルディス料理が食べれるの。ユア好きだったよね?」
ユアの顔がひまわりの様に明るく咲いた。
「大好きだよ。じゃがいも大好きだし、塩漬けの肉も皆は好まないけどあたしは好きだな!」
その笑顔をみれてカーニャもふふっと笑う。
「揚げたお芋と茹でたソーセージから頼もう」
最初に頼んだ飲み物を持ってきた店員に、幾つか料理を注文するカーニャ。
「じゃあ無事王都到着を祝って」
「かんぱーい」
コチンとグラスを当てて口を付けるカーニャとユア。
二人は先日のアウシェラ湖以来、二人で食事するときは飲酒することにしていた。
そんなに沢山は飲めないが、ふたりともすぐ赤くなって口が軽くなるのだ。
それはゆっくり布団の中で手を繋いでいるときのように、自分でいられる時間だった。
「今回の旅に誘ってくれてありがとうカーニャ。とっても楽しいよあたし」
「うれしいな。ユアが喜んでくれるならあたしも何でもしてあげたい」
食事が終わる頃にはすっかり酔もまわり、気持ちよくにこにこする二人だった。
ほろ酔いで手をつないだ二人がホテルに戻る。
結局ユアが自分たちの部屋を覚えておらず、カーニャの部屋で一緒に寝るのであった。




