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【みんなの夏休み:第9話:ぬいぐるみの宴】

その夜、レティシアも侍女を伴ってカーニャの常宿ホテルにスイートを取った。

カーニャの部屋より大きい最上階のロイヤルスイートだった。

そこにミーナとカーニャも招待して、宴が始まるのである。

そう『ぬいぐるみの宴』である。

キングサイズのベッドが二つならんでいて、どこからどうやって持ち込んだのか、大量の大小ぬいぐるみが設置されていた。

室内は明かりを押さえて薄闇の中、ベッドだけがライトアップされ浮き上がっている。

甘い匂いは御香がやんわり焚きこまれているようだ。

宴は食後に入浴して夜着にて参加とドレスコードが珍妙であった。

ミーナに手を引かれて部屋に付いたカーニャは目を見張った。

ぬいぐるみの量や大きさも十分驚きなのだが、侍女のセレナとフィオナのねまきの可愛らしさよ‥‥。

それはレティシアよりもミーナよりも可愛らしい乙女チックな夜着であった。

大き目の犬のぬいぐるみを胸に抱くセレナは、薄いピンクに小さな白い花がいくつも並ぶ刺繍がはいった丸く大きな襟。

そでも裾も7分丈で、浅黒いが少女らしい手足をだして内股に立っていた。

そうしてぬいぐるみに顔を下半分埋めて上目遣いに、リボンのついた頭を傾けカーニャにごあいさつ。

「カーニャお姉さま、こんばんわですわ」

「え、ええ。こんばんわセレナさん」

「どうかセレナと呼び捨てにお願いします、お姉様♡」

かわいらしいの化身であった。

昼の男らしい武人侍女セレナとは真逆の属性に、カーニャは戸惑いを隠せない。

一方でフィオナもすごかった。

日中の怜悧な出来る侍女の仮面を脱ぎ捨て、これが素なのだろうかセレナに負けない可愛らしさであった。

薄い紫の入った白いネグリジェは少し厚手でフリルが付き少女趣味なのだが、今のあどけない表情のフィオナには不思議と似合ってしまう。

日中は付けていなかったホワイトプリムが何故か今は付いていて、侍女属性をかろうじて残している。

いやホワイトプリムにも薄紫の造花まで沢山ついていて可愛らしい。

こちらは大きな黒猫のデフォルメされたぬいぐるみに、はずかしそうに頬を染め顔下半分をかくして挨拶するのだ。

「カーニャお姉さま、こんばんわですわ♡」

声質からしてちがうじゃないの?!とカーニャは混乱。

「ええ、フィオナさんこんばんわ、素敵な夜着ですね」

「あぁお姉さま、どうかただフィオナとお呼び捨てくださいませ」

どこのオジョウサマなんだよと思いつつも、二人に腕を取られてミーナとレティシアがきゃっきゃとしているベッドに連れて行かれる。

ああ伯爵家の侍女なら貴族子女かとも思い出したカーニャは、両腕に熱く柔らかいものを押し付けられるのであった。

「ミーナそんなにぬいぐるみが好きだったの?来月の誕生日はぬいぐるみにするわねプレゼント」

「え!本当ですかねえさまあ!うれしい!」

ぬいぐるみをぽいっとして、ぎゅっと抱きついてくるミーナをよしよしと撫でるカーニャ。

うしろのほうで侍女ズが「てえてえですわ」とか「わたしもお姉様に撫でられたい」などと呟いている。

「さあさあ皆様もベッドにお上がりください。ぬいぐるみの宴ではベッドが会場ですわよ」

と主催者のレティシアが招くので、カーニャもしかたなくベッドに上がった。

5人で車座に座り、各々がぬいぐるみを抱えていた。

カーニャの膝の上にも、レティシアが羊のかわいいぬいぐるみを置いてさあさあと進める。

見回せば妹ミーナも巨大なクマをだいてぺたりと座っていた。

「こ、このぬいぐるみ達はレティシアさんのものなのかしら?」

カーニャは戸惑いつつたずねる。

「おねえさま、是非これからはレティとお呼び捨てださいませ。そしてほとんどのぬいぐるみはわたくしが持ち込みましたわ!」

誇らしげに宣言するレティシア。

どうりでやたら高級そうな香水の臭いがすると思ったと、カーニャは少し呆れる。

ミーナに寄り添ったレティシアはぬいぐるみを交換してもらい、クマをぎゅっとしている。

取り替えたキリンの首にミーナも抱きついていた。

キリンは最大級のぬいぐるみで、座ったミーナより大きかった。

すぐ反対側では、ふたりの元侍女カーニャのなかではそうなったがいちゃいちゃとぬいぐるみをだいて話していた。

ふたりとも年齢以上におさない言葉遣いと仕草で、なにか心を解き放った感すらあった。

(これはとてもキケンな宴なのでわ??甘い匂いとぬいぐるみの柔らかさでおかしくなりそうだわ)

ミーナとレティの距離や、二人の侍女と自分の間合いがやたら近いのも気になるカーニャであった。

侍女達はバディのように協力してカーニャを囲い込もうとするのだ。

ベッドの上という限られたスペースの中で。




そうして眠くなるまでぬいぐるみの感触と甘ったるい匂い、少女達のちょっと熱い視線と会話にさらされたカーニャは、自分は部屋に戻るからとミーナを残し逃げ出したのだった。

(はぁはぁ、危ない所だったわ。まるで手を変えた新手の洗脳のようだったわ)

レティシアの部屋から出てドアを閉めたカーニャは、ガウンを羽織るのもそこそこに足早く自分の部屋を目指すのであった。

部屋にもどったカーニャがガウンを脱ぐと、自分自身からも柔らかく甘い匂いがしてくらっとした。

ふらふらと浴室にたどり着き、すべて脱ぎ捨てシャワーを浴びるのであった。

ごしごしと泡だったスポンジで体中を洗う。

(なんだかやっと頭がスッキリしてきたわ。なにか毒性のある御香か香水でも使っていたのでわないでしょうね?)

くんくんと体の匂いを嗅いでみて、髪にも付いていると気付いたカーニャはさっき洗ったのにまた洗髪するのであった。

(ミーナが心配になってくるわ、大丈夫かしら?)

そんな不安までクラスAハンターのカーニャに抱かせる、恐ろしい宴であった。

そして宴はいまだつづいていたのだった。



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