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【みんなの夏休み:第4話:ヴァルディア家の月】

カーニャの実家ヴァルディア家に一泊することとなった一行。

同じ年頃の女子が6人もいるのだ。

それにエリセラまでくわわって、女子女子な会話は途切れること無く屋敷を賑わした。

パパレオニスは少し肩身が狭いのでした。

部屋割りはいつもの二組、ミーナ・アミュアとカーニャ・ユア。

そこにノア・ラウマのもう一組が客室にあてがわれるのだった。




今夜も少し痩せてうつむいた半月が向かえてくれた。

ヴァルディア家の裏庭は家人たちの努力か、いつ来ても美しく整えられ花が必ず咲いている。

今はひまわりとマリーゴールドで夏らしい装い。

一つだけ置いてある鉄製の白いテーブルセットさえ、計算された配置で美しい姿を見せてくれる。

カーニャはいつものようにテーブルセットに腰掛けて月を見ていた。

時々叢雲が横切るが、晴れ渡った空に綺麗な月が見える。

「いつ見てもきれいな庭だね」

後から歩いてきたユアがカーニャに話しかける。

夜のユアはお昼の元気な声と違い、しっとりと大人びた声だ。

椅子に座ったまま振り向くカーニャは、ユアが来ると解っていたので慌てない。

二人とも風呂あがりだ。

カーニャの横にユアも座り月を見上げる。

「なんだかお母様がごめんね?賑やかなのは久しぶりではしゃいじゃったみたい」

ちょっと苦笑ぎみにユアを見るカーニャ。

カーニャはユアと二人きりだと、とても素直に話せる。

「ぜんぜん。あたしもママさんに甘えちゃったよ」

すっと視線を下げるユアは少しだけ寂しそう。

「ママさんはとても優しいな。嬉しかったよ甘やかしてもらえて」

セリフと裏腹な雰囲気から、墓参りをしてきたのだと思い出すカーニャ。

カーニャがユアの手を取る。

「ここから見る月が一番きれいなのよユア」

振り仰ぐ二人は巧みに配置された草木がシルエットになり、一枚の絵画のような風景を眺める。

「内緒だけどね」

にこりと笑うカーニャ。

んっとカーニャを見るユア。

「お父様がこのテーブルでお母様に結婚を申し入れたんだって」

「えええ!すごい!」

話題性がありすぎ昼のユアに声がもどる。

悪戯っぽい笑みで唇に人差し指を添えるカーニャ。

「お父様には内緒ね、お母様に口止めされてるの」

ぽーっと赤くなったユアが答える。

「なんだかロマンチックだなぁ、素敵なお話。もちろん月夜をえらんだんだろうね?」

「それはもう、お母様が一番すきな三日月の晴天を選んだんだって」

「ふぅ、ごちそうさまだよぉ。ママさんとパパさんはとても仲が良いね」

そうして話題は途切れず、ユアのほほにさした影は姿を消すのであった。

少しスマートな半月はうつむいているのではなく、子どもたちを見つめているのかもしれない。




半月の中庭を見下ろすテラスがある。

青い光に照らし出されるのは、よく見ると裏庭と相似に寄せて整えられたテラス。

2階の屋上一部がテラスになり、3階のミーナの部屋に接続している。

ミーナが闘病生活をすごした、ミーナにとって特別な部屋だ。

今夜のテラスには二人の少女が追加され、完成された美しさを作り上げていた。

裏庭とお揃いの白いテーブルセットにはミーナとアミュアが掛けている。

「手すりまで行かないと見えないけど、声が少し聞こえたし姉さまとユアさんも月を見ているのねきっと」

下に聞こえないようにと声を潜めるミーナが、にこりとアミュアを見る。

「ミーナは大人になりましたね」

微笑んだアミュアがこれも控えめな声で告げる。

「そうかな?背は少し伸びたと思うけど」

さっきまで一緒にお風呂に入っていたので、アミュアはミーナの成長具合を思い出していた。

「体ではなく心のおはなしです」

にっこりとアミュアが答えた。

「自分では変化がわからないものね。学園で多くの人と触れ合うからかな?」

「大丈夫なのですか?学院は。いじわるする人はアミュアが成敗しますよ」

ふざけたように言うが、瞳の奥に本気がうかがえるアミュア。

「だ、大丈夫みなやさしくしてくれるわ。同室のエーラとも仲良しだし」

すこしアミュアの圧を感じるミーナであった。

すっと自然にアミュアの手をとるミーナ。

大丈夫を伝えたいのだ。

以前のようにべたべた距離をつめなくとも感じることが出来るようになったのだ。

安心感を。

ミーナはアミュアに依存し支えられることで、立ち上がっていたのだ。

アミュアの不在が辛く、再会後はその温度で癒やして貰っていた。

今のミーナはしっかりと自分の足で立ち、もう恐れるものが無いのでアミュアに縋らずともいられるのである。

ただ手を繋ぐだけで、以前よりも近くにアミュアを感じられる。

そう丁度裏庭のカーニャとユアのように。

そんな二組の少女たちを見て安心したのか、月は雲の裏に隠れ休むのであった。




「窓側がいい!」

ノアは仁王立ち腕組でラウマに宣言する。

「月がとても綺麗です。わたくしも窓側で月がみたいですわ」

珍しくゆずらないラウマが同じく腰に手をあてる。

むむむとお互い譲らないと理解したか、距離をつめ睨み合った。

この客間は東向きの2階にあり角部屋のツインなのだが、月明かりは窓側のベッドだけ照らしていた。

風呂上がりにお茶を仲良く飲んで、今日の戦闘の総評などしていたのだが、さあ寝ようとなったところで二人共窓際のベッドに上がったのだ。

ベッドの上で向き合う二人は火花をちらす。

「いつもノアが窓際だよ」

選べるときはたしかにノアが勝手にそうしてきたのだ。

ラウマは譲ることを嫌がらないので、ノアは当たり前と思っていたのだ。

「たまにはわたくしに譲ってもいいのではないですか?ノア」

「いや!」

二人の話し合いは平行線であった。

「あ!そうか!」

ノアがひらめく。

もう一つのベッドにジャンプして移る。

どちらのベッドも音を立てない達人の動きだ。

枕を拾ってもどってくるノアがこうしてこうしてと配置をいじっている。

「ほらこうして窓の方に二つ枕を置けば、二人共見えるよ!」

ヴァルディア家の客室はわりと豪華でベッドも大きい。

天蓋は無いがダブルサイズである。

「ああ、ノアすばらしいです!」

そういって先行し仰向けになるラウマ。

明るい月光がラウマにかかっていた。

うまく行ってうれしいのかにんまりしたノアもすぐ横に仰向けに横になった。

並んで見上げた月は青々と美しい光を落としていた。

仲直りにと、どちらからともなく手をつないだ。

同じ月を6人が見上げる。

同じ時間を同じ場所で6人がすごす。

そんな特別な贅沢を味わったのだった。

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