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【みんなの夏休み:第2話:アミュアのないしょばなし】

ちょっと表現が気になったので、直しました。流れに変化はありません。お騒がせしました。

ユアとアミュアは協力して夜霧から荷物を下ろした。

荷下ろしが終わるとユアに頷かれ夜霧が影に消える。

夜霧は呼ぶまで影に潜むことが出来るのだ。

呼び出しはユアの付けている指輪で行う。


「アミュアさ、何か用事が有るんでしょ?手伝いいるかな?」

最近のユアはこういった時とても鋭い。

思考ではなく、感覚で真実を引き寄せるのだ。

二人の積み重ねた時間も一役買ったかもしれない。

それくらいの時をこえてきたのだ。

「ありがとう、手伝いはいらないです‥‥あとで説明します」

くると背を向けるアミュア。

「すぐ戻るから、ちょっと一人にしてほしいのです」

アミュアがこういった行動を主体的にするのは非常に珍しく、ユアは心配で仕方ないのだ。

(アミュアにも何か事情があるんだきっと。説明するというような何かが)

ユアはまっすぐアミュアの背に声をかける。

出来る限りの優しい声だ。

「わかった。じゃあ焚き火だけおこしてるね、時間はきにしないでいいよ」

笑顔のユアをちらとだけ見て頷くアミュアは、そのまま祠を離れ街道を進んでいった。

アミュアに見せなかった、ユアの顔には心配だと書いてあった。




アミュアは記憶をたどる。

最近になってしっかり思い出した、異世界への旅路。

(ここで曲がった)

街道横の森に分け入るアミュアは、かつて旅立った小さな広場に至った。

(あぁ‥ここです。ししょうのロッドを見つけて、あの長い旅にでたのです)

ラウマ像の祠周りで見つけてきたこぶし大の石。

小さな石を2つ積み上げて墓標とした。

(ユアがおかあさまをお参りするのを見て思い出したのです。ししょう不幸のアミュアをゆるしてください)

ユアを真似てしゃがんだアミュアは1輪の積んできた花を添える。

(ずっとお墓も作らなかった弟子をおゆるしくださいししょう)

一度失った記憶を魔法陣で全て思い出したアミュアは、ソリスとの日々を詳細に思い出していた。

10年にも及ぶ愛された日々を思い出したのだ。

(ルンも元気でいるのかな?‥‥許されるのならもう一度あの地にたどり着きししょうを弔いたい)

立ち上がり目を開けたアミュア。

小さなお墓しか作れない自分が少し情けなく思った。

(ちゃんと儀式魔法を習っていたらよかったです。立派なお墓をつくれました)

段々と暗くなる森の中、せめてもとあまり得意ではない地魔法を唱える。

詠唱が終わるとソリスの墓とした石を、少しだけ地面が盛り上がり囲み崩れないようにとしたのだった。

ユアが心配しているなと思い至り戻るアミュアは、最後にもう一度だけとソリスの墓を見る。

(きっとまた来ます)

アミュアは大切な日々を思いながら背を向けたのであった。




アミュアが戻ると、焚き火の側で簡易五徳に小鍋を乗せたユアがコトコトシチューを作っている。

「ただいまユア、ごめんなさい。おまたせしました」

ミルクの甘い匂いがする。

ユアの得意なホワイトシチューだろう。

「おかえり、晩ごはんできてるよ。手をあらってきて」

にっこりユアが優しい声で言い、鍋を下ろす。

泉に行き生活魔法で手を洗う。

ハンカチをだして手を拭きながら戻るアミュア。

ユアが鍋からうつしたシチュー入りカップをアミュアに渡す。

「熱いから気をつけてね」

そういいながら自分のカップにもシチューをそそぐ。

アミュアは祠の石段に敷いた折りたたんだ毛布に座る。

自然と隣にユアの場所を開ける。

何も言わなくてもそこにユアが座るのだった。

うすい大判タオルケットがふわりとアミュアにかかる。

ユアが一緒にくるまったのだ。

並んで座った二人は、ふーふーとシチューの入ったカップを冷ます。

とても優しいミルクの匂いが辺りに満ちて、アミュアもユアも幸せな気持ちが湧いてくる。

ユアの肩にぴたっと自分の肩を当てるアミュア。

薄着どうしの肩が熱を伝えてくる。

焚き火の照り返しも少し有って、初夏の夜を温もりが満たすのだった。

言葉は無かったが、お互いの体温が十分に気持ちを伝えた。

いままでもそうしてきたのだ。




ユアは食事のあとにアミュアの好きなココアを入れてくれた。

初夏とは言えここは雪月山脈にも近く、夜はまだ冷えるのであった。

「ユアに話したいことがあるのです」

ココアのカップを両手で包み熱をもらうアミュア。

「うん。なんでも聞くよ」

ユアの言葉には裏表がない。

嫌なことはちゃんと嫌だと言うのだ。

アミュアは安心して話し出す。

「ふしぎな話だけど、いったんしんじてほしいです」

「もちろん信じるよ」

当たり前だといわんばかりのユア。

アミュアは時間をかけて一つづつ伝えた。

異世界に召喚されていたこと。

そこで魔法の修行をしながら10年たったこと。

魔王が復活して師匠と相打ちになったこと。

ユアは一度も質問しないので、それほど時間をかけず話し終わった。

「そうしてわたしはししょうを看取り、この世界に帰ってきた」

そこまで話す間にココアは無くなってしまった。

「ユアを見る限りこちらでは時間が立っていないと解ったのです」

カップを置いたアミュアは、ユアの腰に抱きつく。

きゅっとユアの頭を自分の頭に押し当てる。

「とても悲しかったのですが、涙も声もでなかったのです」

アミュアの腰にユアも手を回し抱きしめてくれる。

ユアはぎゅっと強く抱きしめる。

大丈夫と言われたきがしてアミュアは心も体も力を抜いた。

「そうしてユアと歩き出したのです」

今まで自分でも忘れていた大事なことをユアに伝えて、ふんわりなにかが緩んだきがするアミュア。

頭と頭、肩と肩がふれあい熱を伝えてくる。

「今まで話さなかったのは、不思議なことに先日記憶をとりもどすまで、自分の経験とおもえなかったのです」

くりっと顔を動かしユアをみるアミュア。

「夢の中で見た話だと思っていたのです」

ほほとほほもくっついていたのに横をむいたので、おでこ同士で支えるようになった。

「しんじてくれますか?」

「もちろん信じるよ?」

なんできくの?という感じにユアが言う。

おでことおでこをくっつけて眼と眼がとても近くにあった。

ユアの目には一筋も影がない。

すべて信じたと言われた気がしてアミュアは嬉しくなった。

どうしたらこの気持ちを伝えられるのか分からなくなり、またぎゅっとユアを抱いた。

ユアも背中を抱いてくれて、とても密着するのでアミュアは伝わる熱で蕩けるように力を抜くのだった。

そのままタオルケットに二人でくるまり、ココアの甘い香りと共に眠りに落ちたのだった。



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